聖夜の贈り物 -幕間-若きギルベルトの悩み3

「…責任……取れよ…ばかぁ…」
力ない開口一番がそれで、吹きだすギルベルト。

「当たり前だろ。俺様は無責任な人間じゃねえ!
責任も権利も全部抱え込んてやるよ」


とりあえず気持ちを受け入れる気があるようなそのセリフに、さて、今度こそ行動の真意の説明を…と思ったギルベルトの耳に次に入ってきたのは意味不明の言葉だった。

「いきなり…最後までって…。どんだけせっかちなんだよ…」
「へ??」
きょとんとするギルベルトに、こちらもきょとんとした眼で見上げるアーサー。

「だって……普通手順てもんがあるだろっ…。そりゃ一緒に暮らし始めてからはもう1か月だけど……でも、そういう関係とかなかったし…フェリシアーノはそうなってすぐに最後までだなんて言ってなかったし……」
言っているうちに恥ずかしくなってきたのか、赤面して俯くその様子は可愛い。
可愛いのだが……

「あの…アルト?フェリちゃんになに吹き込まれたんだよ?」
いや~な予感にかられながら聞くと、
「そんな恥ずかしい事、言わせんなっ。ばかあ!」
と真っ赤な顔で怒られた。

「ああ、悪いな。でも俺様どうしても確認したいだけど。言ってくれね?お願いだから」
聞きたいような聞きたくないような…ああ…でも聞かないとまずいような……

アーサーは羞恥で耳まで真っ赤になっていたが、やがて顔を見られたくないのか、ギルベルトに抱きつくように顔をギルベルトの胸にうずめた。

「…その…だな…。特別な相手と愛を確かめ合う時は…あ、これは俺がそう言ったわけじゃなくて、フェリが言ったんだからなっ!」
「はいはい。確かめ合う時は?」
恥ずかしいのかいちいち脱線するアーサー。
しかたないので、なるべく淡々と先をうながす。

「体の一部を…相手の体の一部とっくっつけるんだって……」
「うん、まあ…そうだな」
と言いかけて…まさか?と嫌な予感がよぎる。

「お…俺もいきなりでびっくりしたけど…ちょっと息苦しかったけど…でも……別に嫌とかそういうんじゃなくて………お前がどうしてもしたいなら……また確かめてやってもいい……」

これって…そういう意味…か?
ガク~っと肩を落とすギルベルト。

もういっぱいいっぱいだと言うのが丸わかりの涙目で、真っ赤になって震えているアーサーに、それは唇ではなくて……今のじゃまだまだ愛の交歓の入り口にも到達してないとはとても言えない。

「アルト、一応確認させてもらっていいか?」
せめて男女の場合を知っていればそちらからでも…と一縷の望みをかけて聞いてみた。

「お前…お家で性教育って受けた?」
「せいきょういく?正しい教育か?」
その答えでもうだめだ…とわかった。

フェリシアーノでさえ受けているのに、どうなってるんだ、カークランド家?!

「ギルベルト…俺……やっぱりなんかダメだったか…?」
がっくりとするギルベルトが気になったのか、アーサーがギルベルトの胸から顔を離してギルベルトを見上げた。
捨てられた子犬のような涙目でそんな事を聞かれたら、もう何も言えない。

男女の交わりすら知らない子供に、いきなり男同士のとかを教えたらトラウマになりかねない。
もう徐々に教えるしかないのか…長期戦になりそうだ。

「なんでもねえ。俺様、久々に武器振り回したからちょっと疲れたし寝るわ~。
おやすみ~」
寝るふりをして、アーサーが部屋を出て行ったら抜いておこうと、とりあえず布団にもぐりこむと、
「うん、寝るか」
と当たり前に隣に横たわって懐に潜り込んでくるアーサー。

へ??

「あの…アルト?何してんだ?」
「何って…愛を確かめ合ったあとはこうやってくっついて寝るんだって…」
「……それも……フェリちゃんが?」
「うん。」
あの子はまた余計な事を~~~!!!

こうして手を出すに出せない状態で、別の意味の体の疲れが限界MAX.。
最大の敵はカークランドでも東の国でもなく、自分の理性とフェリシアーノだった事を、ギルベルトは生殺しの生き地獄の中で思い知って夜が明けるのをひたすら待つのだった。


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