まだ眠ったままの無防備な姿に正直欲を覚えた。
そういう意味で好きだ自覚してしまったらしい。
やることで頭がいっぱいの少年期はとうにすぎたとはいえ、そう思った相手を前に聖人でいられるほどには枯れてはいない。
さすがに初めてでいきなり寝込みをおそうのはまずかろうと理性を総動員していた瞬間、アーサーは実にタイミング良く目を覚ました。
(これ…普通ならもう食っとけってフラグだよなぁ…)
と思わないでもないが、まあ相手が相手だ。
将来そういう関係になれるよう、今回のようなことがないように脅しでとどめておこうと、
『じゃ、目ぇ覚めたとこで、お仕置きタイムに入るか?』
と始めたのは非常に理性的で正しい流れだったように思う。
目覚めたばかりのアーサーは当然状況なんて把握していなくて、小さな悲鳴をあげてパニクって抵抗していたが、
『もう勝手にどっか行かねえように、色々躾けねえとな…』
と、捕まえて抱き寄せて耳元で低くささやいてやれば、
『ひゃっ…』
と小さく身をすくめて大人しくなった。
そこで
『痛いの……やだ……』
と、涙でうるんだ瞳で上目づかいに言うって…なにそれどんなエロゲ?
もしかして俺様、煽られてる?煽られてるよな?
と、クラクラ目まいがした。
『だったら、抵抗すんなよ?俺様が優しくできるように…』
額…続いて涙があふれる目尻にキス。
『…ほんとに?』
と、抱きしめるギルベルトのシャツの裾をおそるおそる握る弱々しい手をつかんで
『…できるだけな…』
と、あとは軽く口づけて終了。ネタバラシだ。
…と、思って油断した。箱入り息子を甘く見てた。
そのままそっと口づけると、びっくりしたように丸くなる目。
見る見る間にまた止まっていた涙があふれ出てきて
「…やっ……」
とか細い力で胸を押し戻される。
(おまっ…ダメだろ、それって。抵抗してるってより、煽ってるだろ)
と、試され始めた理性に内心ため息を付きながらも、さらに腕を強くつかんで膝上へと抱き上げると、
「ここでやめたらお仕置きにならねえだろ?」
と、飽くまで芝居っぽさを放棄したら終わりだとばかりに視線を合わせてクックッと思い切りヒールっぽく喉の奥で笑う。
そんなギルベルトを前にアーサーは放心状態だ。
力の抜け切った体をギルベルトに預けたまま、ぼ~っと虚空をみつめている。
「アルト?」
ポンポンと軽く頬を叩いてみると、ようやく気付いたように、それでもまだ若干虚ろな視線をギルベルトに向けた。
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