聖夜の贈り物Verぷえ10章10

警備を倒して倒して倒して…何十人か何百人か目の警備の杖をなぎ払ったところで、バキン!と長剣が折れる。

ここ数年ずっと戦場を一緒に駆け抜けた相棒をギルベルトは迷いなく投げ捨て、背中の大剣を振り上げた。




絶対に…何を投げ捨てても絶対にあきらめない!
ギルベルトはそう決意してまた塔を登る。

小さな傷はあちこちに出来たが、足が動くうちは気にならないし、気にしない。
倒して倒して登って登って…体力には自信がある方だが、さすがにきつい。

「あ~、これ終わったら鍛錬の時間増やすかぁ…」
誰にともなくつぶやいて、疲労から意識をそらす。

息も切れ、少し酸欠気味な気もするが、足は止めない。
アーサーを取り返したらアーサーのために美味いクーヘンを焼いてやって、それに合わせたとびきり美味しい紅茶を淹れてもらうのだ。

ああ…見えた!!

おそらく最上部の扉。


バン!と思い切りよく開けた瞬間、目に入るのは宙に浮いたまま眠っているアーサー。

しかし安堵したのも束の間だった。

おそらく何かの仕掛けがされていたのだろう。
パン!と何かがはじける音がして、その体が落下していく。
その下には恐らく地上まで続いた穴。

「アルトっ!!!」
ギルベルトは迷うことなくアーサーに向かって手を伸ばしたまま、一緒に落下していく。
伸ばした手が細い腕に触れる。

ああ…やっと取り戻した…。
疲れも死への恐怖もなにもかもがかすむような幸福感。

「もう離さねえ」
ギルベルトはアーサーを力いっぱい抱きしめた。


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