塔内にいたのはほとんど魔術師で、詠唱の時間を与えずになぎ倒すギルベルトとルートによって、次々と倒されて行った。
そして辿り着いた大きなドア。
バン!とこれも蹴破ると、そこにいたのはアーサーを連れ去った三男ウィリアム。
敵襲というのを聞いていないのか問題にしていないのか、プティフールやサンドイッチののった三段重ねのトレイを前に優雅なティータイムの真っ最中だった。
「お前…何やってんだ?戦う気ないのか?」
イラっと長剣を構えるギルベルトにウィリアムは一瞬チラッと視線を向けたが、すぐまたカップに視線を戻す。
「アフタヌーンティーの時間だし?
ああ、でも少しは足止めしたっていう形跡くらいは残さないといけないのかな?」
「形跡だけで…いいの?」
きょとんと首をかしげるフェリシアーノ。
「うん、いいの。別に今回何も命じられてないし。
なんで言われもしないのにティータイム中断してまで働かないといけないわけ?」
と、当たり前のように言いはなつ。
「き…きさまぁ!!そんな怠惰な事でどうする!!人間日々絶え間ない努力をしてこそ…」
「ルートは黙ってて!!」
何故かそこでその態度にキレるルートを、珍しく厳しい声でフェリシアーノが制する。
「ね、ものは相談なんだけど…」
「ん~?」
「一応足止めしてるって事実があればいいんだよね?」
「うん、まあ何もしないで素通りさせたらさすがにまずいかなぁとは思うから、とりあえず…1時間くらいお茶でもしてく?」
「うん。俺が足止めされるから。それでいいかな?
俺お茶菓子とか作るのも上手だよ」
「おい、何を言っているんだ、フェリシアーノ!そんな危険な事させられるかっ!」
ニコニコと提案するフェリシアーノと焦るルート。
当のウィリアムは興味ないようで、
「あ~、それならスコーンでも焼いててよ。そこキッチンね」
と、続きの間を指し示す。
「で、戦いたいならお茶飲んでからなら相手してあげるけど?」
と、さらにつけたすが
「ううん。無理して戦わなくてもいいや。じゃ、キッチン借りるねっ!」
とフェリシアーノは答えて
「俺は大丈夫だからっ!ルート達は先に進んでっ!!」
と、部屋のドアからギルベルトとルートを押しだした。
ウィリアムの部屋を横断して、またひたすら魔術師達をなぎ倒しながら階段をかけあがる。
心持ち警備が武闘派っぽくなってきたのは気のせいではないだろう。
「次はあれか?」
「まあ…順番からするとそうだろうな」
目の前に見えてきた扉。
バタンと開けると、いきなりビュン!と棒が突き出された。
「うあっ!お前、杖そんな風に扱っていいのかよっ?」
これがフランシスが言っていた、杖で殴ってくるというやつだろう。
「うるせえ!NOUKINなてめえらに合わせてやってんだろうがっ!感謝しやがれ!!」
言いながらも赤毛の男、アイルは棒を突き出してくる。
ほとんど棒術のノリだ。
「そうか…では俺が相手をしよう。
どうせなら同じ武器を用意願えれば嬉しい。でないと優劣がはっきりつかないからな」
ルートの言葉に、アイルはにやりと笑った。
「ほお?なかなか話がわかるじゃねえかっ。
そうだよなっ、男なら生まれながらの能力なんかに頼らず、自分が鍛錬して鍛え上げた肉体で勝負だよなっ!」
「同感だ。」
と何故かこちらも嬉しそうなルート。
「あ~…じゃ、俺様先行くぜ~」
NOUKIN二人が楽しげに戦っている横を、ギルベルトは駆け抜けた。
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