聖夜の贈り物Verぷえ10章7

「さてと、あたしが手伝ってあげられるのはここまでよ。
これから王宮の方にばれないように時間稼ぎしてこないとだから。
ちゃっちゃとお姫さま取り戻して帰ってきなさいよっ」

とりあえずフランシスから聞いたルートで東の国のカークランドの塔の近くまで送ったあと、エリザは馬上で手綱を握ったままそう言った。



その表情は当然のように厳しい。
国王の跡取りの安全を考えればとんでもないことをしているという自覚が彼女にもあるのだろう。

だが、エリザは共に戦場を駆け抜けたギルベルトの技量と、柔らかいようでいて一点においては意外に頑固で折れないフェリシアーノの性格、そしてそのフェリシアーノを想うルートの気持ちなどをかなり正確に認識していて、諦めているらしい。


生真面目なルートが
「エリザ…無理をさせてすまない」
とさすがに彼女の立場を思って謝罪する言葉も、謝罪したからといってやめるという選択肢はないのだろうと思えば、ごねても仕方ないと思うのだろう。

「ばかね、余計なことは気にしないのっ。
やるからにはビシっと決めていらっしゃい。ほら、急いでっ」
と、笑って送り出すあたりが、彼女のすごいところだ。

それでも申し訳なさげなルートの袖をフェリシアーノが
「ほら、急ごう!」
と、引っ張る。

「んじゃ、ちょっくら東の国最強の魔術師軍団に喧嘩ふっかけてくらあ」
と、それを合図にギルベルトがエリザにそう言って、3人は彼女を背に塔へと向かった。

それでもケセセっと笑ってヒラヒラ手を振って見せるギルベルトを背に、ギルベルト、フェリシアーノ、ルートの3人は塔に向かった。


「…本当に塔…なんだね。」

たかだかとそびえたつ塔。
周りには人の気配はない。
フェリシアーノは塔をず~っと見上げる。

首が痛くなるくらい反り返ってようやく見える塔の最上部。
そのあたりにいるんだろうと思う。

「体力…もっとつけておけば良かったな…」
何階建てくらいなのかわからないが、邪魔が入らなくても果たして登りきれるのか…。

フェリシアーノの小さなつぶやきを拾ったルートは、
「疲れたら言え。お前くらい背負って登ってやる。」
とポンポンとフェリシアーノの頭を軽く叩く。

「うん…でもそれじゃただの足手まといだよね?俺」
しょぼ~んと落ちる肩。

「いや…お前は戦力にはならんかもしれんが…お前がいれば守らねばと思うから…俺が倍強くなれる。大丈夫。来た意味はちゃんとある」

「ルート…」
自分の言った事に照れて真っ赤になった顔をそむけるルートに、フェリシアーノが嬉しそうに飛びついた。

「ありがとう、ルート♪俺頑張るよっ。頑張って応援するっ♪」
戦力にならない気満々である。


そんなピンクのオーラの二人から少し離れて、ギルベルトは入り口を探る。
警備の兵らしき者はいない。
罠か…?と眉を少し顰めた時、塔の入り口のドアが光った。


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