二人はいつのまにか仲良くなっているようで、アーサーもそれに対して全く気負うことなく、二人で楽しげにおしゃべりをしている。
二人とも愛らしい顔をしていて、邪気のないおしゃべりに興じている様子は本当に可愛らしく、普通なら“ここが天国だったのかっ!”というところではあるが、なんとなく面白くない。
(…いくらフェリちゃん相手だって、そんな無防備に服脱ぎ着させられてたら駄目だろうが)
と一瞬考え、それから、
(いや、何考え取てんだ、俺様は!)
と、慌てて頭を横に振ってその考えを振り払う。
どうも先程からつづくフェリシアーノとルートの話に毒されてきたらしい。
(アルトはまだ子供だし。馬鹿らしい)
ギルベルトは軽く肩をすくめると、
「入るぞ~」
と半分開いたドアを今更ながらノックした。
「あ、ギルベルト兄ちゃん、ちょうど良かった。今包帯巻き終わったとこ。
ね、ルートは?」
フェリシアーノは手早く周りを片付けながら聞いてくる。
「あ、畑を見てもらってる」
「そっか~。じゃ、俺も行こっと♪」
あとをよろしく~と、言い置いて、フェリシアーノははずんだ足取りで部屋を出て行った。
残されたアーサーが少し寂しそうにそれを見送るのを見て、またちょっと面白くない気持ちが蘇ったが、理性で抑えつけて、ベッド脇の椅子に再度腰をかけた。
「アルト、どうした?まだ体つらいか?」
出していないようでいらつきが出てしまっていたのだろうか?
少し緊張した面持ちのアーサーにつとめて優しく声をかけると、アーサーは俯いて唇をかみしめた。
「なんだ?どうしたんだ?」
その肩がふるえている事に気づいて、ギルベルトは慌ててアーサーの顔を覗き込む。
アーサーはポロポロと涙を流していた。
「どうしたんだ?体つらいのか?それともフェリちゃんに何か言われたのか?」
焦って聞くが、アーサーは黙って首を横に振る。
「なあ、頼むから泣かないでくれ…」
どうしていいかわからず、とりあえず涙をふいてやるが、次から次へとこぼれ落ちる涙は止まる事を知らない。
「…ごめん…」
しばらくそうしていたが、やがてアーサーが蚊の鳴くような声でつぶやいた。
「……迷惑…かけた…」
「迷惑なんて思ってねえよ」
「…でも……」
「アルトを拾ってから今まで一度も、一瞬たりとも迷惑なんて思った事ねえから」
自分の本当に心からの気持ちが伝われば良い、と、ギルベルトはうつむいたアーサーの顔をのぞきこむように視線をあわせる。
しかし次にアーサーの口から出たのは信じられないような…到底認める事などできない言葉だった。
「…俺…出て行くから。…体動くようになったら出てく」
Before <<< >>>Next (2月22日0時公開予定)
0 件のコメント :
コメントを投稿