それは随分幸せな生活に思えた。
しかし……
「無理だ…」
とアーサーは首を振った。
「どうして?」
と首をかしげるフェリシアーノの言葉に俯き加減に答える。
「敵国の魔術師って知っててかくまってるなんてわかったら…迷惑かけるし…」
「な~んだ、そんなこと」
悲壮な思いで口にした言葉をフェリシアーノはあっさり流した。
「そんなことって…」
「大丈夫。アーサーが魔術師だってことは俺以外気付いてないから♪」
「え??だって俺確かに目の前で…」
そう、目の前で魔法を使って移動したはずである。
「えっとね、あの時ギルベルト兄ちゃんは侵入者の方向いてたから。でもって意識が侵入者にむいてたし、一瞬でアーサーが移動してきた事気付いてない。
で、ルートはやっぱり緊張しすぎてて単に自分がアーサーが移動したのを見逃したと思ってたよ。だから気付いたのは俺だけ」
「だからか…態度が全然変わらなかったの」
謎が一瞬にして解けた。
力が抜けるアーサーに、
「でもね、俺が聞いたような事情をギルベルト兄ちゃんが聞いたら、もう絶対にアーサーの事手放さないと思うよ」
とフェリシアーノが付け足す。
「まあそれはそれとして、責任かぶせるのが嫌ならこのまま記憶がないって言うのをあくまで貫けばいいんだよ。
大丈夫っ、俺に任せてっ!俺が絶対にハッピーエンドにするからっ。」
「でも……」
このままここにいたらきっと何かにギルベルトを巻き込んで危険な目に会わせる、そう続けようとしたアーサーの言葉をフェリシアーノは遮った。
「そのかわりね、俺もアーサーにお願いがあるんだ」
「お願い?」
「うん♪宝玉探しに大陸に行く時、一緒に行ってくれないかな?
アーサーが一緒なら俺も心強いし、楽しいと思う。
色々まだ準備中だけどね、時期がきたら一緒に行ってくれない?
まあ…その場合もれなく血相変えたギルベルト兄ちゃんが追っかけてくる気もするけどね」
「大陸…かぁ」
「うん♪そんなつらい家に戻るよりはきっとずっと楽しいよっ。
一緒に幸せを探しに行こう?」
フェリシアーノの笑顔を見ていると、本当に幸せが見つかるような気がしてくる。
というか…他にいていいと言ってくれる居場所ができるなら、嫌がる実家に居座る理由もない気がしてきた。
「そう…だな。ああ、いいかもしれない」
「やったぁ!」
自分が一緒にいる事によって喜んでくれる人がいる。
それはなんて幸せな事なんだろうと、アーサーは思った。
たとえそれが今の…最初につかみかけた泣きたいような幸せの終わりだったとしても…。
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