ね、アーサーは魔術師なんだよね?」
時間には限りがあるのだ。
ギルベルトの気持ちを知らせるのは本人に任せる事にして、フェリシアーノは先に進む事にした。
そして聞かれたフェリシアーノの質問に、ずっと隠してきた事だが、今更隠しても仕方ない、と、アーサーはうなづく。
「誰にも言わないから…どうして今こうしているのか聞いて良い?記憶って実はあるの?」
さらなるフェリシアーノの言葉にアーサーは一瞬迷ったが、まあ万が一知れたところで全てが今更だ。魔法を使ったのが知れた時点でどちらにしても国には戻してもらえない。
アーサーは諦めて自分の身の上から始まって、怪我をした経過から、ギルベルトに拾われたときのこと、情報を引き出そうとして挫折した事、ジャガイモが実ったら黙って帰るつもりだった事、あの日の侵入者はおそらく自分を連れにきた末の兄だったことまで、全て包み隠さず話した。
全てを聞き終わった時、フェリシアーノは何度か言葉を選んでいたようだが、やがて
「心配しないで。俺はアーサーの味方だからね」
と前置きをしたあと、
「いくつか聞きたいんだけど…」
と、始める。
「一つはね、アーサーは結局どうしたいのかな?
意地悪な兄ちゃんたちがいても実家に帰りたいの?それともここにいたい?」
「どうしたいなんて考えた事なかった…」
その質問にアーサーは即答した。
「今まで俺がいても良い場所なんてなかったから…。
それでも唯一実家は役に立つ間は衣食住は与えてくれたから…当たり前に帰るものだと思ってた」
アーサーの答えにフェリシアーノは腕組みをしてう~んとうなる。
「ね、アーサーの話きいてる限り、家と戦場しか行った事ないんだよね?
そしたら逆にいちゃダメって言うのが実家だけって可能性もあるわけだよね?」
「へ?」
考えてみたこともなかった言葉にアーサーはポカ~ンと呆ける。
「あのさ、少なくともギルベルト兄ちゃんはアーサーがいきなり消えたらすごく悲しむよ?
…っていうか……あの人ああみえて結構執着心強そうだから、地の果てまで探しに行く気がする」
「まさかっ」
「まさかじゃないよっ。アーサー全然わかってないでしょ。
ギルベルト兄ちゃんはね、守るべきものってのを作るともうありえないくらい執着する人なんだよ。
今まではそれが王宮から託されたルートだったんだけどね。
ギルベルト兄ちゃんは要塞でもなければ護衛がいるわけでもないこの極々普通の家で、王家の跡取りを狙う全ての外敵からルートを守りきったんだ。
それでも兄ちゃんもルートはいずれ返さないといけないってのはわかってて、セーブはしていたと思うんだけど、アーサーはルートを返して守り続けていたギルベルト兄ちゃんが守るべきものを失くしてたぶん困惑していたところに現れた、どこかに返さないでもいい守るべき存在だからね。
あの人のアーサーに対する執着って、俺が思わず100年に一度の力を使いたくなっちゃうくらいには本気だったんだよ?
とにかく、アーサーが実家帰りたいとかじゃなければ帰らなくていいんじゃないかな?」
そう言ったあと、フェリシアーノはアーサーの両手を自分の両手で握って
「それに…」
と視線を合わせる。
そして
「アーサー帰っちゃったら会えなくなっちゃうし、俺も寂しいよ」
と続けた。
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