フェリシアーノはとりあえずかすかに残るアーサーの怪我の手当てをしながら話し始めた。
「俺の事先に話した方が話しやすいよね?」
と、人慣れしていないアーサーに対する気遣いがありがたい。
フェリシアーノはそれから淡々と自分がギルベルトと同様、現国王とその側室の孫であること、そして本当は現国王と正妻の間の孫であるルートの側近候補になるはずだったが、彼は父親が暗殺された時に身の安全を図るため秘密裏にギルベルトに預けられたこと、亡くなった近衛隊長クラウスの事、現在それをエリザが引き継いでいる事、自分がルートを特別な意味で好きな事など、おおまかな自分の身の回りの状況を説明した。
「でね、ここからはちょっと秘密の話。」
誰に聞かれるわけでもないのだが、フェリシアーノは少し声のトーンを落とした。
「俺ね、近いうちにこの島を出ようと思ってるんだ。
俺の爺ちゃんはすごくたくさん奥さんがいて、王族もいっぱいいて、正妻の腹の孫や子以外は王位継承権のあたりもちょっと微妙で、ドロドロしすぎててね。
俺は王位とか王族であることとかにそこまで執着がないから。
別の目的もある。探したい物があるんだ。
ここまではギルベルト兄ちゃんには話した事あるんだけどね。何を探したいかまでは言ってない。
だからこれ教えるのはアーサーが最初だよ」
「そんな大事な事を俺に教えていいのか?」
「うん。俺もアーサーの抱えてる秘密全部聞きたいから。俺の抱えてる秘密も隠さない。相手に信じてって言う前に自分が信じなきゃね」
と片眼をつぶるフェリシアーノ。
「…お前…強いんだな…」
感嘆のため息をつくアーサーに
「ううん。弱いから協力して欲しいんだよ」
と微笑んだ。
「俺ね、さっき話した通りクラウスを亡くしたからルートまで亡くすのはすごく怖いんだ。でも俺は力もなくて…王様になるわけでもないから、もしルートがルートのお父さんのように死んじゃう事になっても何もできないんだよね。
もちろんルートだけじゃなくてさ、じいちゃんもギルベルト兄ちゃんもエリザベータさんもギルも…俺が知ってる人みんな全員死んで欲しくない。
みんなさ、平和な中で好きな人と一緒に幸せになって欲しい。
俺、みんながハッピーエンドがいいんだよ。
でね、お城の宝物庫の中で偶然みつけた古書にね、書いてあったんだ。
太古の昔、まだ今よりもっとあちこちで争いがあった時にね、平和をもたらした宝玉があったんだって」
「あ~。もしかしてカトル・ビジュー・サクレの事か?」
「うん!それだよっ!!アーサーすごいね、知ってるの?!」
「まあ…魔法王国だから、東の国は。その手の伝承は結構残ってる」
「そっかぁ…やっぱりアーサーに話してみて良かったよ~」
本当に嬉しそうなフェリシアーノの様子に、アーサーも嬉しくなった。
西の国にきてから初めて誰かに貢献できた気がする。
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