聖夜の贈り物Verぷえ9章03

「お前…可愛いなぁ」
もうほとんど無意識のつぶやきは、しっかりフェリシアーノの耳に入っていたらしい。

ふわりと再び体を少し離したフェリシアーノはアーサーに視線を合わせ、
「え~?アーサーの方が可愛いよぉ」
と、花がほころぶような笑みを浮かべた。


何を言ってるのだ、この可愛い少年は、と、アーサーは憤慨に近い感情を覚える。
自分がこの少年のように可愛ければこんなに自分は嫌われてはこなかった。
自分みたいな可愛くない人間を可愛いなんて言うのは本当に可愛いものに対する冒涜だ!

「俺は可愛くなんてない!可愛いのはお前だ、ばかぁ!」
それでもこんな可愛い相手に本気でなんか怒れるわけがない。

ぷすっとふくれると、フェリシアーノは一瞬びっくりしたように目を見開いて
「あはは。アーサー可愛すぎ~!」
と、きゃらきゃら笑ってまたアーサーに抱きついた。

「もう俺アーサーの事ほんと好きになっちゃいそうだよ」
クスクス笑い声をもらしながら耳元で聞こえる柔らかい声に、アーサーは耳まで真っ赤になる。

「俺ね、可愛いものだ~い好き♪」
楽しげに言うフェリシアーノに、アーサーも

「俺も可愛いもの好きだぞ」
とついつい本音を暴露する。

「じゃ、一緒だね♪友達になろうっ」
「友達……」
言葉としては知っているが、自分には縁がない…と考える事すらしなかったくらい縁がなかった言葉。
温かく優しい響き。

「俺ね、今まで友達っていなかったんだ。だからね、とっても欲しかった」
「お前こんなに可愛いのに?みんな友達になりたがるだろ?」
ふわふわと可愛いフェリシアーノの友達。絶対みんなこぞってなりたがるはずだ。

「えっとね、みんなにとって俺は王子様だったから。家来にはなってくれても友達にはなってくれなかったんだよ。
王族は王族でうちは人数多いから、王位継承権とかね。
俺は別に全く興味ないんだけど、みんな色々牽制し合ってて…」

しょぼんと肩を落としてうつむくフェリシアーノ。
しかしすぐまたぱっと顔をあげて、両手でアーサーの手を握った。

「だからね…ダメ?俺、最初の友達がアーサーだったら嬉しいよ」

ダメなはずがない。嬉しくないはずがない。でも…

「俺…敵国の人間だぞ」
ギルベルトとの間でさえ常にそれがひっかかっていた。

「アーサーは…西の国の人間の俺の事嫌い?友達になりたくない?」
顔を覗き込んでくるフェリシアーノ。
その手の温かさに泣きそうになってアーサーは黙って首を横に振る。

「じゃ、友達になろう。
アーサーが何か困ってたら俺、全力でアーサーを助けるよ。
それで俺がピンチの時はアーサーが俺を助けてよ。
楽しい時は一緒に笑おう。
それだけじゃなくて悲しい時は一緒に泣いて、苦しい時は助け合おう?」

差し出される手を振り払えるわけがない。

「…お前がどうしてもなりたいって言うなら…」
アーサーの精一杯の肯定の意を汲みとって
「どうしてもだよっ」
とフェリシアーノは嬉しそうにうなづいた。

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