エリザが部屋に戻った時の開口一番がそれだった。
「な、言ったろ?」
と、それを聞いてぱち~んとウィンクをして見せるギルベルトの横でフェリシアーノはホッとしたように肩の力を抜きながらも、
「俺の方こそ説明も説得もしないままでごめんね。みんなの気持ち全然考えないで…」
と謝罪をする。
もうこれは自分が間に入るまでもないなと、ギルベルトはそう判断して、まだ意識のないアーサーのベッドの傍らの椅子に座って様子をみているルートの方へと足を向けた。
「今回は…俺様も悪かった。
お前には何も伝えないまま面倒事に巻き込んじまってごめんな?」
と、そう詫びれば、ルートは眉を寄せたむぅっとした表情で
「全くだ。
面倒事なら余計に俺にも言うべきだし、巻き込むべきだろう?
俺はあなたの家族なんだから、ちゃんと言ってくれ。
あなたがこの少年を家族として受け入れると言うなら俺だって受け入れるし、きちんと助けてやれる準備はある。
いつまでもあなたに与えられるだけの子どもではないんだから、あなたが選んだ新しい家族に俺だって与えてやる側になることはやぶさかではない」
と、そう言いつつ、兄に椅子を譲って立ち上がった。
ああ…良い男に育ったな…と、ギルベルトはそんなルートを見てしみじみ思う。
あの小さな赤ん坊がこんなに立派になって…と、感慨深くて泣きそうだ。
思わず片手で顔を覆うと、ルートは、兄さん?と、少し気遣わしげに言ってくるので、そこはそれでも兄として崩れて心配をかけるわけにも行かないなと、ギルベルトは
「いや…俺様子育ての天才じゃね?と思って」
と答えて、
「本当にあなたという人は……無茶なんだか余裕がありすぎるんだか、相変わらずわからない」
と、ルートを呆れさせた。
「んじゃあ、まあ、あれだ。
結局アルトには紹介もしねえままだったし、お前、城を空けても大丈夫なようだったら、1週間ほど泊まっていくか?
なんならフェリちゃんも」
と、そのギルベルトの申し出に、ルートは自分の護衛役のエリザにちらりと視線を向ける。
その視線にエリザは
「あ~、いいわよ。
あたしも今回はやらかしちゃったからお詫びも兼ねて。
ギルがいれば護衛としては十分でしょうしね。
城の方にはあたしんとこの別荘にご招待しているって伝えておくわ」
と、苦笑しつつも片手をあげて了承した。
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