聖夜の贈り物Verぷえ7章03

(…神様…神様…頼むからっ…)
アーサーが吐き出した血がギルベルトのシャツが赤く染める。
それにも構わずギルベルトは連れ去られるのを恐れるように、細い体を強く抱きしめた。


「…ルート…ルート…はやく…」
フェリシアーノもギュッと手を握り締めてうつむく。
その時…

「エリザさん参上よっ!!!」
半分開いた窓がバ~ン!と音を立てて全開し、月明かりを背にマントを翻した男装の麗人が窓枠に飛び乗った。

「とぉ!!」
の掛け声と共に室内に飛び降りたはいいが、窓枠に引っかかった自身のマントで首を絞められ
「きゃぁぁぁ~~!!!」
と目を白黒させてうめく。

「…おい…お約束なボケか?大丈夫か?…」
と、さすがに無駄な死人は出したくないと、呆れた言葉をかけながらもギルベルトが駆け寄ってひっかかったマントを外してやると、女性はぜ~は~ぜ~は~粗く呼吸を繰り返した。

「わざとじゃないわよっ!!ちょっと失敗しただけよっ!!」
と涙目で行動はとにかくその言葉にはお約束の報復を入れねばとばかりに、ギルベルトの腹に重い拳を入れてくる。

その女の事はギルベルトも知っていた。

エリザベータ・ヘーデルヴァーリ。
現皇后であるルートの祖母が北の国から嫁入りしてくる際についてきた貴族が将軍家に嫁いだ家の子孫で王族ではないが、後ろ盾のない王族のギルベルトなどよりはよほど権力はある。

そしてこちらはギルベルトのように生活のためではなく趣味で戦場巡りをしていて、ギルベルトとも何度か戦場で共に戦っていた。

「…ったく…せっかく来てあげたのにギルは感謝ってものが足りないわ」
エリザもギルもとりあえずそれぞれ体制を立て直して立ち上がり、ため息をつきながら一歩足を進める。

「で?力使うのは誰に?みたところ無駄に元気そうだからあんたにじゃないわよね?」
「当たり前だろ。俺だったら潔く諦めて死んでるわ。使いたいのはこいつにだ」
ギルベルトはそこでベッドの上のアーサーに視線を移した。

「え~っと…」
そこでエリザは初めて少し驚いたように目を見開いた。
それからギルベルトの隣に立つフェリシアーノに目を向ける。

「いいの?フェリちゃん」
エリザの問いにフェリシアーノがうなづいた。

「うん。お願い」
「マジで?」
「うん」
再度の問いにフェリシアーノはうなづが、それでもエリザはさらに言い募る。

「ねえ、余計な世話かもしれないけど…何を言ってるのかわかってる?」
「わかってる。ごめん。俺ひどい事してるね。でも俺っ…」

「なんか事情はわかんねえけど、何か手があるなら早くしてくれ」
お互い何か言いかけるフェリシアーノとエリザを制すると、ギルベルトがイライラといい、それを受けてフェリシアーノはエリザの手から鍵を取るとそれで自分のチョーカーを外してピュイッ!と口笛を吹いた。

するとどこからともなく綺麗な青い鳥がパタパタとフェリシアーノの手に飛び降りてきた。

「じゃあ、そういうことで…始めるよ?」
と、フェリシアーノは青い鳥を乗せた両掌を目の前に掲げた。

「太古の時代から我が国を守ってきた幸せの青い鳥、俺の声に耳をかたむけ願いを聞いて。
天と地と木々に水、この世の全てを慈しむその心に願う。
目の前の命に神の慈悲を。
我が名はフェリシアーノ・ヴァスガス。
汝につかえるものにして、汝の慈悲を示すもの。
どうか我が祈りを聞き届けたまえ。」

いつも貼り付けているふわふわとした表情から一変、真剣なまなざしで鳥を乗せた掌を少しうながすようにアーサーの横たわるベッドの方へと伸ばす。

すると小鳥は了承するようにピィと鳴き次の瞬間…いきなりあたりがパアァ~と光に包まれた。
痛いほどの眩しさに皆思わず目を閉じる。

数秒後…徐々に弱まって行く眩しさにソロソロと目を開けるギルベルトの目には、まだ顔色は若干青いが先程のままギルベルトに抱きしめられた状態で穏やかに眠るアーサーの姿。

呼吸が急に静かになったので心配になり、おそるおそる顔に手をかざすとちゃんと呼吸をしているようで、一気に肩の力が抜けた。


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