聖夜の贈り物Verぷえ6章06

「こいつに…アルトにさわんなあぁっ!!!」
アーサーのお気に入りのジャガイモ畑の一角で、アーサーが不審者に腕を取られていた。
そしてあっさり連れて行かれかけている。


そこでギルベルトは思った。
訂正するっ!自分の認識は甘かったっ!

アーサーはボ~っとしている間に捕まって、慌てて涙目で抵抗するタイプだと思っていたが、それ以下だ。
半ば涙ぐんだ大きなエメラルドの瞳には確かに驚きと怯えが読み取れるものの、恐怖の限界を超えたのか抵抗すらできずに放心している。

不審者が…いや、自分以外が自分の大切な被保護者に触れている、連れ去ろうとしている。そう思うと体中が総毛だった。

黒鷲がするどいクチバシと爪をいったんしまって、大切に大切に雛を育てていた巣に泥棒にはいるような真似をする不審な魔術師に怒りがこみあげる。

そう、大事な場所を土足で踏み荒らされた怒りに何か激しい感情がふきあげてきて、ギルベルトは一分のためらいもなく、アーサーの腕をつかんでいる賊の右手に向かって剣を振た。

そのとてつもなく早い動きに賊は対応出来なかったようで、斬りつけられたことにひどく驚いたようである。

それでも賊が慌てて手を離して飛びのいたため薄く皮膚に傷を付けたにとどまったが、とりあえずアーサーを取り戻せた事にギルベルトはホッとして、まだ放心状態のアーサーを自分の後ろにかばった。

そのまま間合いを取りにいく賊と距離を詰めたいところだが、アーサーを自分から離すのは危険だ。
そう思っていたところに、自分を追ってきた王子達が目に入る。

ルートは強く育てた。
王宮に戻せばもう護衛はたくさんつけてもらえると知っていても、自衛は大事だと剣術はしっかり叩き込んだのだ。
それと同時に思いやりのある王になるようにと、愛想はもうどうしようもなかったが、気持ちだけは優しい男に育つよう頑張ったので、庇護欲はそれなりにある。
だからアーサーを自分より弱者と認めれば守ろうとしてくれるだろう。

そこでギルベルトは
「後方のルート方へ逃げとけっ!!」
と、アーサーを後ろへうながした。

するとルートはその期待を裏切らず、その場をなお動けないでいるアーサーの腕をつかんで、自分の後ろへとかばってくれる。

あの小さい赤ん坊と思っていたルートが、ずいぶん立派な男に育ったものだ、と、ギルベルトは誇らしい気分になった。

「さて…人のもんに手ぇ出そうとした礼はさせてもらぜ…」
と、アーサーの身の安全が確保できたところで、ギルベルトは再度賊に全神経を集中させる。


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