聖夜の贈り物Verぷえ6章02

かつてルートと住んでいたギルベルトの家に東の国の人間と思われる子供が住んでいると聞いた時のルートの心境を一言で表すならば

『なにやっているんだ、兄さんは!』
の一言である。


ギルベルトは王族といっても後ろ盾のない、王族の中でも下の下。貧しいと言っても過言ではない家系の生まれだった。
両親が早くになくなったためじいやはいたが、使用人と言えるのはその老人たった一人だけ。
日々の暮らしは質素で、そんな中でルートを引き取って育ててくれたのだ。


暗殺の危険を回避するため身分を隠してということで生活を変えるのはご法度だったから、17才で城に帰るまでは一切の援助もない。

ギルベルトはあくまで弟としてのルートを飢えさせないため畑をたがやし、大きくなってきたルートに教育を受けさせる金を稼ぐために、自身は戦場へと身を投じた。

従兄とは言えほぼなんの縁もゆかりもないに等しいルートを育てるために、人生の全てを犠牲にしてきたといっても過言ではないと思う。


それがようやくルートが一人前になって自分のために生きる事ができるようになったのだ。
なのになぜまた子供を育てようなんて発想になる?
しかも…よりによって現在敵対中の国の人間なんてやっかいな子供を?

それでもまだ邪気のない小さな子供ならとにかく、自分より少し下くらいの年なら、何か企んでる可能性の方が高いのではないか。

にいさん、いい加減常識というものを学んでくれないか?!など育つ過程で暴言を吐くようなこともあったが、ルートは秘かにギルベルトに感謝していたし尊敬もしていたし、強い親愛を感じていたし、出来る事なら恩返しもしたいし、幸せにもなって欲しかった。

それが、自分を育ててくれた人の良さでまた得にもならないのに誰かを助けて、今度はあだで返される。
いや、最悪殺される可能性だってあるかもしれない。
そう思うといてもたってもいられなかっただけなのだ。



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