聖夜の贈り物Verぷえ4章01

ギルベルト・バイルシュミット。

現王の孫にして現皇太子の育ての親。

皇太子を守り育てた功績で広大な領地を与えられるも、貧しい農民達に無料貸与。
同じく与えられた城は戦争孤児の孤児院になっている。

正妻の血筋ではないものの、功績を認められて正妻の血筋の王子達に次ぐ第三位の王位継承権を与えられているが、そのての諸々に興味なし。

権力争いには目もくれず、一人国防のための戦いを転戦。最前線に立ち、兵を鼓舞しながら共に剣を振るっていて、兵の信頼も厚い。

一方で自身の暮らしは質素で庶民的。
ごく特殊な時以外は召使もおかず時間の許す限り畑仕事にいそしむ。

しばしば市場にも顔を出し、気軽に庶民と言葉をかわす気さくな性格で国民からの人気も高く親しまれている。

「…って……どれだけ善人なんだよ」
ギルベルトがいない間にこっそり魔法で集めた情報を整理しながら、アーサーは呆れて息をついた。
初日の行動で抱いた、馬鹿みたいにおひとよしだという第一印象は、本当にそのまんまだったらしい。


怪我をしたアーサーが戦場でギルベルトに拾われてからそろそろ1か月がたとうとしていたが、拾われた当日から今までずっとギルベルトの人の良さも過保護っぷりは変わらない。

アーサーが万が一にでも戦火に巻き込まれたら大変だと初日に運び込まれた国境沿いの家を離れ、怪我のせいで体が弱っているから少しでも環境の良い所をと、ギルベルトが生まれ育ったという田舎の屋敷に連れてこられた。

なのにそんな環境の良いはずの平和な場所ですら、ギルベルトから『あんな所にいた理由がわからねえ以上、誰かに狙われている可能性もあるから』と、わけのわからない理由で屋敷の敷地内を出る事を禁じられているため、アーサーの情報収集はもっぱら魔法頼りだ。

とはいっても、欲しい情報をピンポイントで入手するなんて便利な魔法があるわけはない。
風を操り、遠くから無差別に拾った音から有用そうな情報を整理するという、涙が出そうなくらい地道な作業だ。

もちろん…風向きや風の強さ、アーサー自身の体調なども音の拾える範囲に影響するし、人の声だけを拾うなんて器用な事もできるわけじゃない。
知らない人間が思うほど、魔法は万能なわけではないのだ。

一見簡単そうな、音を拾うとか、飲み水や火種などの小さな用途の成果物を得る事の方がデリケートなコントロールが必要で、実は戦闘などでドッカ~ン!とやるよりもよほど高度な技術が要るのだと言う事を知っているのは、おそらく魔術に深く携わった人間だけだろう。

まあそんな魔法講釈はさておき、戦争とは無関係なところで大怪我をした上、敵国の人間に助けられ保護されたなどという醜態をさらした以上、なにかしらの戦果をあげないと帰れないアーサーは、とりあえず手っ取り早いところでギルベルトの弱みでも握ろうと、こんな涙ぐましい手間暇をかけて情報収集中なわけだが、ギルベルトには本当にあきれるほど薄暗いところがなかった。

身辺は見事なまでに驚きの白さである。



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