なあ、ネコ、そう思わね?」
戦闘の合間に摂る食事もあえて一般兵と同じ物。
ただ、いつもなら兵に混じって摂る食事は今日に限っては一人離れて摂る。
クリスマスだけあって増える家族の話題を耳にいれたくなくて、昼食のお供はおこぼれに預かろうと寄ってきた人懐っこい茶色の猫だ。
この猫はどこか賢い猫で、ギルベルトが分け与える食べ物の代わりと言った感じで、まるでちゃんと言葉を聞いているように黙って耳を傾け、同意を求めると
「にゃ~ん」
と鳴いた。
そのあまりのタイミングの良さにギルベルトは小さく噴出した。
「なんだよ、結構俺と気ぃあうんじゃね?なんならうちに一緒に来るか?」
とさし出した手は、しかし取られる事はなかった。
猫はプイッっとそっぽを向き、今度は遠慮しておきますとでも言うように
「にゃっ」
と声をあげる。
本当にギルベルトの言葉を理解しているかのようだ。
そうして会話をしながら食事を摂っていた一人と一匹だったが、最後、昼食を食べ終わったギルベルトが
「じゃ、そろそろ俺戻るな」
と立ち上がると、猫は別れでも告げたいかのようにスリっと一度ギルベルトの足に頭をすりつけると、タタっと少し離れて振りかえってまた
「にゃ~ん」
と鳴き、今度は振り返ることなく走り去って行った。
気が合ったように見えても所詮猫とは一期一会。
昼食時間の間中、楽しく会話できただけでも上出来で、次に万が一目にする事があったとしても、お互い声をかける事はないだろう…。
そう思っていたのだが、何か特別な縁があったのだろうか。
ギルベルトはその猫とのちに再会を果たすことになるのだった。
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