聖夜の贈り物Verぷえ2章03

いかにも軍人という感じのやや硬い雰囲気のこの男は、それでも妙に甘やかし方が上手い気がした。

なにより撫でる手がひどく温かい。
気も使わせない。


子供扱いは悔しいが心地よく、でも心地よいと思っている自分が少し悔しい。
さらにいうなら…そんな自分の子供じみたところを男に大人な目でみられているのが気恥ずかしい。

自分では見えないが、だんだん熱がたまってきた頬は真っ赤に違いない。
恥ずかしさが限界に達する前にこの空気をなんとかして、現状を打開しなければっ…。

「料理っ!」
何度か何か言おうとパクパクと口を開けたあと、ようやく声にできたのはそれだけだった。

当然それだけで意図が伝わるはずもなく、男は頭をなでていた手をピタリと止めて、
「食えそうになってきたか?食いたいものがあるならとりわけてやるぞ?」
と、まあそれまでに比べればまともな反応を返してくる。

しかし今回はアーサーの意図の方が一般的なものと違ってた。
当然自覚のあるアーサーは、予め聞こうと思っていた事を口にする。

「…じゃなくてっ。一人なのになんでこんなすごい料理用意してたんだ?」

そう、さきほどからの疑問が解けてないのだ。

「あ~、それか。答えてなかったな。」

一応理由はあるらしい。
男はちょっと気まずそうに頭をかいた。

さきほどから飽くまで穏やかで大人な様子だった男のちょっと違った反応に、アーサーはもしかして恋人に振られて…といった類の、触れてはいけない話題に触れたのかと焦ったが、続く男の言葉は、やっぱり意図の読めない意外なものだった。

「俺様な、子供の頃から去年まで上司の孫の護衛やってたんだよ」

男から的確にしてわかりやすい言葉が返ってこない事には不本意ながらも慣れてきた気がする。
わからなければ具体的に聞くしかない。

「それと一人で大量の料理用意してたのと何の関係があるんだよ?」

まあそう聞かれるのは当たり前に想定の範囲内なのだろう。
男は、まあ聞け、と、話を続ける。

「つまりな、去年まで二人でクリスマス祝ってたんだ。
で、なんとなくな、今年は一人きりってわかってたはずだったんけどな…気がついたら二人分用意しちまってたと、こういうわけなんだ」

ようやく全ての糸がつながって見えた。

その安堵からついつい
「で?そのお孫様は今年はどうしたんだよ?」
と口にしてしまった直後、アーサーは焦った。

これ…死んだとか護衛役をクビになって他の護衛がついたとか、そういう話か?
どちらにしても良い話じゃないのでは?と、アーサーは慌てて口をつぐむが、当の男はあっけらかんとした口調で

「あ~、大きくなって城に帰った。今じゃ立派な跡取り様、未来の王様だ。
ということで、俺様も世話役もお役御免ってことで、めでたく絶賛一人楽しすぎる生活を満喫中ってわけだ。」
と爆弾発言をかましてくれた。



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