生贄の祈りver.普英_12_5

「話…できんのか?つか、俺が来てるってわかってのか?」
数日後…鋼の国の城についたロヴィーノは、案内されたギルベルトの私室のリビングで、ギルベルトに抱えられるようにソファに座った…というか、座らされたギルベルトを見て、驚いたように目を見張った。


前回会った時のあの大国の王としての貫録を備えた姿はかけらもない。
表情は虚ろで目は光を失っている。

「あ~…なんていうか…ショックが大きすぎたっていうか…ね。
お姫さまがいなくなってからずっとこの調子で…。
食べないし反応もほぼしないの。水だけは流し込めばかろうじて飲みこむ感じかな」

こそりとエリザに耳打ちされて、ロヴィーノはごくりと唾を飲み込む。
フェリシアーノに頼まれてここまで来たものの、自分が何か言ってなんとかなるものなのだろうか…。

「おい…」
おそるおそる声をかけると、ギルベルトはひどく億劫そうに、それでもかすかにロヴィーノに視線を向けた。
ロヴィーノは反応がある事にホッとする。

「今回俺が来たのは、庇護される側としてまあ…なんつ~か…贈り物に側室でもと思って連れてきたわけなんだけど…。」
表情のない目を向けるギルベルトが怖い。

この状況でこれって、もしかしてすごくやばい?俺危険じゃねえか?と思うものの、一応そういう親書送ってるはずだし、しかたねえよな?と思いつつ、やはりビビる。


「…側室?」
ぎろりと睨まれた気がして、ロヴィーノは後ずさる。

「…あ、あのっ…親書にそう書いといたはずなんだけど……」
涙目でエリザを振り返ると、
「あ~、ごめんっ。その事についてはまだ言ってなかった。
ギルは当時お姫さまに夢中だったし。」
とエリザは心底申し訳無さそうに両手をあわせる。

「でもまああれよ。いいんじゃない?少しでも気晴らしになれば…」
と言うエリザの言葉は最後まで続けられなかった。

「ふざけんなっ!!!」
と、いきなり目が据わったギルベルトがエリザを怒鳴りつけたからだ。
その勢いに恐怖のあまり涙目なロヴィーノ。

「す、すみませんでしたっ。気に触ったんなら連れて帰りますです。コノヤロー」
自身の後ろにいる側室候補らしい娘にしがみついて、ロヴィーノが震えながら言うと、エリザがスッと間に入った。


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