アーサーの部屋を辞したエリザが向かったのはフェリシアーノの部屋だ。
本当は本人が見に行きたいと騒いでいたのだが、フェリシアーノがアーサーの側によるとギルベルトの不機嫌度が増すため、あとで様子を伝えるからと、大人しくさせておいたのだ。
そうでないと、へんなところで行動派なフェリシアーノは抜けだしかねない。
結局アーサーが体調を崩すと言うトラブルでギルベルトがつきっきりなため、どうやって自室を抜け出してアーサーと会った部屋までたどり着いたのかも謎のままだなのだ。
エリザが尋ねても
「え~、言ったら出れなくされちゃうもん」
と教えてもらえない。
これがギルあたりだったらフライパンで殴り倒すところだが、さすがにもう庇護国となった国の王子だと、そうもいかないので、放置中だ。
一応風邪という診断だが、他にも具合悪そうな様子で、でも本人からどこが痛いのか苦しいのかを教えてもらえないという事を話すと、フェリシアーノは
「ね、エリザさん。俺聞いてみちゃだめ?」
とエリザを見上げた。
「ダメに決まってるじゃない。ギルはフェリちゃんがお姫様に近づくのすごく嫌がってるんだから。」
即答するエリザに、フェリシアーノは、なんで?と首をかしげる。
「俺ね、アーサーの事好きだから、ちゃんと幸せになって欲しいだけだよ?
最初はさ、王様もフランシスさんが俺に対するみたいに、一時的なお遊びでアーサー構ってるのかなぁってちょっと不安だったんだけど、ちゃんとアーサーの事好きみたいだしさ、アーサーだって王様の事とっても好きだから、なんで言えないのかわかんないけど、そこで具合悪くなったら嫌じゃない?」
フェリシアーノの言葉にエリザは目を丸くした。
「なぁに?フェリちゃんお姫様とそんな話してたの?」
「うん。ここ来る途中で王様が助けに来てくれてって話してたんだけどね。なんか、ああ、すっごく好きなんだな~ってわかっちゃう感じだったよ。でね、俺その時は王様がちゃんとアーサー好きなのかわかんなかったから、心配になっちゃったんだけど…」
「そっか~。フェリちゃんとは普通にそういうおしゃべりするのね…」
頬に手を当ててエリザは考え込んだ。
同じ年頃の子だからなんだろうか…。
そう言って警戒心が強いギルベルトが納得するのだろうか…。
考えながらちらりと目を向けたエリザの視線に気づくと、フェリシアーノはにっこり微笑んだ。
「あのね、俺エリザさんの事も好きだよ。美人だから♪
ギルベルトさんは見かけおっかないけど、優しい人だよね。だから好きっ。
アーサーは…可愛いから好きだし、兄ちゃんは兄ちゃんだから好きっ。
みんなそれぞれ好きな部分は違うけど好きなんだ。」
「あ~うん。わかる。別にギルみたいにお姫様だけダントツに好きっていうんじゃなくて、大事な人の一人ってことよね?」
「うんうん。そんな感じ♪俺ね、みんながハッピーエンドがいいんだよ♪」
エリザ的にはアーサーとフェリシアーノが二人でピヨピヨとしているのも可愛らしくて良いと思うのだが、ギルベルトはとにかくアーサーが少しでも心を許す相手は気にいらないという感じだ。
「とりあえず…今はお姫様がああいう感じでギルがすごく気がたってるから、刺激するのはやめましょ。何か言いたい事があれば伝えてあげるくらいはするけど?」
「うん…俺の言葉伝えるってよりもさ、エリザさんが聞いてあげて?
一番大事な相手ってさ、意外になんでも話せないんだよね。
嫌われたくないって気持ちが先に立つからさ。
だから一番じゃない人が聞いてあげた方が良いと思う。
だからさ、むしろ王様にエリザさんが話せるようにお願いしてみて?」
フェリシアーノは鈍感なようで人の気持ちに敏感な子だとエリザは思った。
何も考えていないのかもしれないが、何かを感じ取っている。
「ちょっと行ってくるわね」
フェリシアーノを頭を撫でて、エリザは再びアーサーの部屋へと向かった。
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