生贄の祈りver.普英_11_2

「ギル、ちょっとだけいい?」

コンコンとドアをノックしたエリザは、相変わらずアーサーの傍らについているギルベルトに声をかけた。


「なんだ?ここじゃだめなのか?」
「うん。できればギルと二人で話したいんだけど?」
「じゃ、だめだわ。無理」
「少しよ?」
エリザが食い下がると、ギルベルトは首を横に振った。

「却下。その少しの間に容態変わったらどうすんだ?」
二人の声に、うつらうつらしていたアーサーが薄めを開ける。

「…ぎ…る。行って来いよ…」
かすれた声で言うアーサーに、だめだ、とギルベルトはまた首を横に振った。

「一瞬でも目を離したら本当に後悔するから。絶対に後悔するのわかってるから」
「…落ち着いて寝れない……頼むから……」
確かにここで言い合いをされたら、寝れないかもしれない。
そして…エリザは諦める気がなさそうだ。

「5分だけだぞ」
ギルベルトは恨めしげにエリザをにらんで、席を立った。


「あのね、ギル、少し私にお姫様と話をさせてくれない?」
ベッドに横たわるアーサーがかろうじて視界の端に映るくらいの位置に移動すると、まずエリザが口を開いた。

「話せばいいだろ。別にお前には口聞くななんて言ってねえぞ?」
「う~ん、二人きりで話してみたいんだけど?」
「なんで?俺がいたら都合悪いことでもあんのか?」
「お姫様が遠慮するから?」
エリザの言葉にギルベルトはガ~ン!という擬音が似合いそうな表情で固まる。

「あ~。悪い意味じゃなくてね」
「どこが悪い意味じゃないんだよ…結局…俺様だけ気を許されてねえってことだろ……」

珍しく涙目になりかけるギルベルト。
あ~、なんだか色々精神的に来てるなぁ…とエリザはそれを見て思う。

「あのね、私とかはわりと遠慮のない人種なわけなんだけどね…」
エリザは言った。

「他の人は違うのよ。フェリちゃんが言ってた」
「なんだよ、あいつの入れ知恵かよ」

とたんに不機嫌になるギルベルト。
それに苦笑してエリザは進めた。

「でもあの子はお姫様の事よくわかってるわ。それはギルだって認めるでしょう?」
痛いところをつかれてギルベルトは嫌な顔をする。

「で?」
「うん…あの子がね、お姫様からギルの事聞いた時、お姫様は、ああ、ホント好きなんだなってわかる顔してたらしいわよ。」

「はぁ?誰を?」
「誰って、あんたの他に誰居んのよ?あんたの話をしてた時って言ってるじゃない。」

「そんなわけないだろ!じゃ、なんで俺様にはなにも言ってくれねえんだよ?」
「……自分の事考えてみなさいよ…あんただって言いたい事言えないでしょうか…」
「へ?」
「らしくもなく遠慮してるでしょ、お姫様には」
ぽかーんと口を開けて呆けるギルベルト。

「好きな相手だと嫌われたくないから遠慮するもんなの」
「だからって…どこ痛いとか言うのまで、なんで気遣いするのかよ?」
「あんただって自分が怪我したら相手が心配するから痛くないって言うでしょ」

「………」
「だから、あたしが聞いたげるから。いいでしょ?
って……ちょ、何赤くなってんのよ、気持ち悪いっ!」

「しかたねえだろっ!好きな子に好き言われたら赤くくらいなるだろっ!
俺様、じまんじゃねえが、好きな相手に好きって言われたことねえんだからっ」
「うあぁ~どこの純情なお坊ちゃんよ?ありえないっ」
「うるせえっ!さっさと聞いこいよっ!」
エリザから顔をそむけてピシッとアーサーの方を指さすギルベルト。

エリザもギルベルトをからかうのが目的ではないので、あっさり引いて
「じゃ、借りるわよ~」
と、アーサーの方へと向かった。



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