といっても…女生徒達に捕まっている時間の方が多いと言う話もあるが…。
一般生徒用とは言っても儀礼服。なかなかお嬢様方には受けているぽい。
そこにコウが降りて行くとさらに黄色い悲鳴があがる。
他に囲まれる前にとコウは慌ててフロウを両手で抱き抱えるとダッシュ。
フロウはそのコウの首にしっかり捕まっている。
いわゆるお姫様抱っこというやつだ。
フロウを走らせるよりは自分が抱えて走った方が早いと、急ぐ時はコウはフロウを抱き上げて走るのが常なので、フロウの方もそのあたりは心得ている。
黙って体育館まで抱えられて、そこでコウが止まると初めてフロウはコウを見上げて口を開いた。
「で?何故体育館なんです?」
「ん、今回の犯人は浅はかな人間だとわかったからな。
多分…危機感なしに物証を残してる気がするから。姫、一つ頼んでいいか?」
「あ~、優波姫、どうなさったんですか?」
フロウが舞台裏に入ると下級生の一人が気付いて寄ってくる。
そろそろ舞台はクライマックスだ。ジュリエットが仮死状態になる薬を飲んでいるシーンで、ロミオも舞台の袖にスタンバってる。
「えっと…これ。返し忘れてたので。ラスト困るかなと思ったんですけど…」
フロウがジュリエットの衣装を借りた時に一緒に持ち出した短剣を見せると、下級生は首をかしげた。
「あらら?短剣、ちゃんとありますよ?」
と、刃がひっこむ演劇用の短剣を出してくる。
「えと…それはどこに?」
「ああ、白鳥先輩がダンス終わった後に稽古で使っていたらしいです」
「あら…じゃあ大丈夫…みたいですね」
と言った後、
「それ…使う場面終わったらこっそり貸して頂いていいです?記念撮影に…」
ニッコリと微笑む伝説のジュリエットにもちろん下級生は了承する。
「これから最後のロミオが短剣で自殺する場面なので…もうちょっと待って頂ければ…
衣装もお使いになりますか?」
「ううん。そこまでの時間はないから短剣だけで」
フロウは言ってそのまま舞台裏で待つ。
舞台が終わり演技者が全員挨拶に舞台に上がると、下級生が短剣を持って来てくれた。
「えと…ちょっとお話もあるので舞台が終わったら白鳥さんに取りにきて頂ける様にお願いしていいかしら?私ちょっとこれから屋上にいるので」
「屋上って…例の事件と何か関係あるんですか?」
その言葉に下級生が少し心配そうに聞いてくる。
「いいえ。単に私が個人的に屋上に用事があって。
白鳥さんにはちょっと義妹さんの事で伺いたい事があるだけなの。お願いします」
それにフロウはにこやかにそう答えると、舞台の下で待つコウの所に戻って短剣を渡した。
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