エリザはそう言って椅子をひきずってくると、ギルベルトの隣に座った。
「あ~、うん。なんか煮詰まってんな。ちょっと自分でもおかしい事考えてたかもな」
「どんな事?」
「うん…聞いたらさすがのお前でも引くぞ?
自分でも他の奴がそんなん考えてるって聞いたら引くから」
「いまさらでしょ?ギルの馬鹿なとこなんて思い切り見て育ってるし、そっちもそうなんだから、嘲笑う事はあっても引きはしないわよ。言いなさいよ」
言葉は悪いものの心配してくれているのは伝わってくるし、幼馴染の気安さもあって、ギルベルトはさきほどまで考えていた事をエリザに話す。
そして全てを話終わると、エリザはあっさり
「ま、あんたらしいわね。」
と言い放った。
「なんだよ、それ。」
「まんまよ。あんた自覚ないの?」
「自覚?」
ギルベルトは首を傾ける。
「そうよ。あんたってさ、用心深いっていうか、昔からなんでもオープンにしているようでいて、本当に大事なモノとかって絶対に他人に見せて自慢したりしない人間じゃない。」
「謙虚だろ?」
「そうじゃなくて」
「なんだよ?」
「他人に興味持たれて取られるの嫌だからって、誰にも見せないで大事にこっそりしまいこんで、自分だけでこっそり愛でるタイプ。で、意外にルートは隠さないのよね。対照的」
あっさり性格の差を見極めて言うエリザにギルベルトはぽか~んだ。
「エリザって…たまに鋭いな」
「そう?いつもでしょ」
くすりと笑うとエリザは少し首を傾けた。
「だからね、トーニョがフェリちゃん嫌な理由もわかるわよ?
あの子あっさりお姫様の警戒心取り去って近づいちゃったから…。焼もち…でしょ?」
ずばり当てられてギルベルトは口をとがらせる。
「なんかなれなれしいだろ。……立場同じだからとか言うし…。
そんなんしかたねえだろ。
俺様だって好きこのんで人質とってるみたいに思われる立場にいるんじゃねえよ」
そのために信じてもらえない、心を開いてもらえないのだとしたら、非常に不本意だ。
決して立場が強いから、いつでも見限れるなどという軽い気持ちで接しているわけではない。
「俺様がどんだけアルトの事想ってるか、見せられるんだったらみせてやりてえよっ。
あいつに対してはもう思い切り引かれるくらい本気だぜ?」
「うん…それは私達はわかってるから」
それでなくてもギルベルトの愛情は狭く深い。
世の中が多くの敵とかなり多くのどうでもいい相手と、本当に極々少数の大切な人間で構成されている男だ。
普通はもっと多くに配られる愛情が、その極々少数にのみ注がれているわけだから、その深さや思い入れときたら、それこそ慣れてない人間からしたら、先程の話ではないが、十分引くレベルだ。
その愛情を向ける頂点に立つ子に対してなら、絶対に危害を加えられないように自分にしか会わせないようにしたいと考えることなど、容易にうなづける。
むしろ今の時点で実行してない事が驚きだ。
それをエリザが遠慮も何もなくポロっと口にすると、ギルベルトはハ~っと大きく息を吐き出した。
「それやって…嫌われたくねえだろ。そんなこと言ったら完全に引かれるわ」
柄にもなく弱気なギルベルトの発言に、エリザはちょっと目を丸くし、それから聞く。
「じゃ、アーサーが嫌がらなければ今頃別棟建ててるわけ?」
それにギルベルトは
「あたりまえだろ。
アルトが閉じ込められてくれるなら、むちゃくちゃ綺麗な建物建てて保護するわ」
と即答。
「大きな大きな宝箱ってとこね」
その答えにエリザはそう言って笑った。
0 件のコメント :
コメントを投稿