生贄の祈りver.普英_9_1

「とりあえずどうしようかなぁ……」
鋼の国の人質用の部屋でフェリシアーノはため息をついた。

容姿にも物腰にもまあまあ自信があって、そこそこ勝算があるかな?と乗り込んではきたものの、相手の反応は思っていたものとまるで違っていた。

強国の王の庇護欲をくすぐるように、少し震えながら両手を胸の前で組み、上目遣いに自国を攻めないでもらえるよう嘆願をするフェリシアーノの様子に、鋼の国の王は全く心を動かされてはいないようだった。

国を攻めるとも攻めないとも明言はせず、
「さすが噂にたがわぬ可愛い顔はしてるな」
と笑顔で言うが、他の…もっと言うなら風の国の王のように、そこに性的な興味を持っているようには感じない。
自国の安全を盾に、この鋼の国の王にとにかく気にいられてこいと風の国の王に秘密裏に命じられて来たわけだが、どうしてどうして、まったく腹の底が読めない男だ。

気にいられようにもこちらの言葉や態度は、薄くでも頑丈な壁で隔たれられているように、ストレートにあちら側へ届いていない気がする。
お手上げだ。

「こちらには他に人質はいないんだね?」
人質のための部屋が連なるあたりに連れて来られたフェリシアーノが、案内の者にそう声をかけると、
「元々陛下はたわむれるために人質を取る趣味はありません。
なのでたいていは用がなくなると国元へ戻されるか殺されるかなので、一人以上の人質が滞在することはないのです」
と怖い言葉が返ってきた。

もしここに来た理由がバレたら自分は完全に後者だと、フェリシアーノは身震いする。

とにかく誰でもいい、一人でも二人でも味方を作っておかないと、とは思うものの、この国では王が絶対らしく、フェリシアーノが近づこうとしても誰もが慌てて離れていく。
良くも悪くも人懐っこく、また人に好かれてきたフェリシアーノは疎外感に少しへこんだ。

部屋にいてもウツウツとするだけなので、フェリシアーノはそこだけは出る事の許されている小さな庭に出る。
自国よりは陽射しが強いが、今日は曇っているせいか過ごしやすい。





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