ギルベルトは執務室で、エリザから報告を受けている。
「今回湖の国を攻める兵を配置したから、慌てて連絡取ってきたみたいね」
エリザはそう言って肩をすくめた。
そのあたりの小国はこぞって鋼の国、あるいは、風の国へと、自国の安全をはかるために使いを飛ばしていた。
小川の国はそんな小国の一つだ。
今回は王位についたばかりのまだ幼いと言えるくらい若い王の双子の弟をぜひ側に置いて欲しいと申し出てきているらしい。
「あそこの子は確かにかわいい顔してるそうだから、あたし的には嬉しいんだけど…なんでうちなのかしら…」
と、不思議そうに首をかしげるエリザに、ギルベルトは
(これだからNOUKINは…)
と、ため息をつく。
「そりゃあ…隣国攻めてきてる張本人だからだろ?風に送って助力頼むよりは、攻めないでくれって攻めてる側に送った方が確実だから」
何を当たり前の事を…という風にそう言うギルベルトに、エリザが眉を寄せた。
「え~!動くか動かないかって意味で言うなら風の方がまだ確率高くない?
あんたは結局人質に影響されて動いた事ないし…。
お姫様だって気にいった後だって、まだ外交的にはなんら便宜はかったりとかする機会はないままだし。
顔可愛くて気にいられる自信あるなら、まだそういうの好きで動いた実績ある風のほうでしょ。だから、不思議だなぁと」
そう言って、あまりそういう関係を追って行く事が得意でないエリザは頭にはてなマークを浮かべる。
そういうことなら考えられるのは1つだろう。何故気づかない?
これだからNOUKINは…と今度は脳内ではなく実際に吐き出されたギルのつぶやきをしっかり拾って、エリザがフライパンで殴りかかってくるのはお約束だ。
「つまり…だな、」
それを必死に避けながらギルベルトが続けた。
「あのエロ魔人の差し金じゃないかと思い始めてんけど。」
「あ~~~!!!そっか~~。」
エリザはようやく合点がいったというようにうなづいた。
「でも…あんたに見抜かれるような策しかうってこないって…外交の風も大したことないわね」
というエリザの言葉にギルベルトは立ちあがる。
そして、フライパンが飛んでこないように十分距離を取った上で
「その俺様さえ気づく事に気付かなかったNOUKIN女が…」
と言いかけて、空を飛んだフライパンに再び床に沈められた。
あたしのフライパンはね空飛ぶのよ?と得意げに言いながらエリザは話を続ける。
「結局あの顔なんでしょうね。あのエロ男、顔だけは良いから皆騙されるのよ。
自分であの顔ひっさげて出て来ないと効果半減だから、わざわざ自ら来たんでしょうけど。
苦労知らずのボンボンがドン底から這い上がって来た叩き上げに勝とうって思うのが甘いのよ!」
ふふんと鼻を鳴らすエリザ。
「お前…相手が白いととことん弱いのに、腹黒合戦だと強いよな…」
と、寝てれば良いのにまた起きあがってきて余計な事を言うギルベルトに、当然のごとくもう一度エリザのフライパンがうなるが、それはなんとか避けた。
そして
「じゃ、断るのね?」
と、何事もなかったように確認を取るエリザに、ギルベルトはきょとんと
「なんで断るんだ?」
と聞き返す。
「え?だって…風の策略なんでしょ?」
と、こちらもきょとんとするエリザに、ギルベルトは
「策略ってわかってるのに見逃してやる道理はないだろ?せいぜい利用させてもらおうぜ」
と、ニヤリと黒い笑みを浮かべて言った。
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