俺様とうさりす6


こうしてローマはそんな3人を残してギルベルトを連れて3人から少し距離を取って話をすることにした。

「あのさ、俺様べつに弱い強いや見た目にもこだわらないぜ?
どんな奴でもまだ未熟な俺様と苦楽を共にしてくれる最初の相棒になるんだから大切にする」

何から話していいものか悩むローマにそういうギルベルトの言葉にローマは少し安堵して、まず一番大切な事を確認する。

「あのな、そいつはもう絶対に返却も交換もNGだ。
連れて行くなら絶対に一生大切にしてくれねえと、困る奴なんだよ。
そこのところは本当に大丈夫か?」

「もちろんだぜ。
俺様は騎士だからな。騎士団長の親父の名と俺様自身の名誉にかけて誓う」

そこで気真面目な様子で頷くギルベルトに、ローマは具体的な説明をする事にした。

「えっとな、そいつは俺が隣の大陸に渡った時に見つけた卵から生まれたポケモンでな、この大陸にはたぶん1体しかいねえ。
他に発見例がないんで、一応発見者ってことで種族については俺が“うさりす”ってつけた新種だ。
タイプは草タイプ。
それ以外は進化するのかしねえのか、強いのか弱いのかさえ、正直俺にも全くわかんねえ」

「…戦闘方法なら…慣れるまでは俺様補佐してやれると思うけど?」

「あ~うん、まあそっちもそうなんだけどな。
それより厄介なのが、こいつは本当は去年のトレーナーのために用意したポケモンなんだよ。
で、新種だ~っつうんで、ボヌフォワのとこの坊主が喜んで連れて帰ったんだが、ほれ、あそこは代々水ポケの名家だからな。
親に反対されて翌日返しに来て、代わりにゼニガメを連れて行ったんだ。
それがうさりすにとってはすげえショックだったみてえでな。
トレーナーの方も新米で緊張するだろうが、ポケモンだってこの日初めてボールに入って初めて自分のトレーナーっつうものを持つわけだからな。
そこで拒絶されて返品されたら、繊細な奴なら当然病む。
で、こいつは初めてボールに入ってトレーナーの家に行って、その夜にボールに入って次にボールから出たら返品されてたってことで、ボール恐怖症みてえで、ボールに入らねえ。
無理に入れようとしたら丸一日飯食えねえ。食っても吐くくらいだ。
そういう経緯があるから、もしかしたら当分懐かねえかもしれねえ。
信頼関係を築くのがすげえ大変だと思う。
それでも大丈夫って言えるか?」

正直…こんな話を聞かされたら自分でも躊躇するとローマは思う。
ましてや相手は10歳を少し過ぎたばかりの少年で新米トレーナーだ。

…ああ、これはロヴィーノを泣かせる事になるよなぁ…と、考えれば考えるほど良い方向に行く気がしなくてガシガシと頭を掻くが、無茶ばかりするローマをたしなめながらもいつも冒険の旅に同行してくれていた亡き親友の孫でもあるこの少年は、祖父譲りの根性と度量を持っていたらしい。

「とりあえず戦闘うんぬんより、まずポケモンに信用してもらうところから始めろって事だよな?
わかった。慣れるまでは場所移動しねえ方が良いかもしれないから、もしかしたら数日はここに泊めてもらうことになるかもしれないけど、良いよな?」
と答えが返って来て、ローマを驚かせた。



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