俺様とうさりす4


そうして1年。
今年もあの日がやってきた。

アーサーが初めて貰われた日…そして捨てられた日の前日……。

博士のデスクに乗って窓から外を覗いていると、子どもが数人研究所に向かって歩いてくる。

そこに無意識にふわさらな金色の髪の綺麗な少年の姿を探すが、彼は去年、あれからゼニガメを受け取って旅だったので、居るはずがない。


…きゅぅ……

アーサーは肩を落としてテーブルから椅子を伝って床に降りると、デスク横にある自分の寝床にもぐりこんだ。

今日は朝早くからローマ博士が、産まれて1年以内の例の3種類のポケモンを今年来る少年少女達の最初のポケモンにするべく、ボールにいれていた。

3匹ということは、去年は4人だった新米トレーナーが、今年は3人なのだろう。

…きゅぅ……

去年の今頃は自分も真新しいボールに入って期待と不安を胸にトレーナー達を待っていたのだが……
そんな事を思うと、胸がずきずき痛んで、大きな丸い目からポロポロと涙が零れ落ちた。

アーサーに、お前のトレーナーだよと言ってくれた相手のためだったら、すごく努力するつもりだった。
本当は戦闘よりも植物の育成や花の妖精達と戯れたりする方が好きだけど、彼が戦闘に勝ちたいと望むなら、一生懸命戦うつもりだったのに……アーサーではダメだったのだ。

どれだけ一生懸命努力しても、水タイプでもなければ、他よりも強くなれる保証もない以上、アーサーは望まれる事もなく、返品されるようなポケモンなのだ。

そう思うと悲しくて、タオルに顔をうずめて、きゅうきゅう泣いた。


そんな風にアーサーが泣いている隣の部屋では…やっぱり泣き声が響き渡っていた。



「うああああ~~~!!!!俺だって、俺だってポケモン欲しい~~!!!
トレーナーになるんだ~~!!!!」

泣いているのはローマ博士の孫のロヴィーノだ。
その横では弟のフェリシアーノがオロオロと兄と祖父の顔を見比べている。

「あ~…お前の父ちゃんが今回はフェリだけだって言ってたから、お前の分は用意してねえんだよ。来年じゃだめか?来年ならとびきりのやつを用意してやるから」
と、いつも豪胆な博士にしては珍しく、号泣する孫の顔をオロオロと覗き込んだ。


博士にはロヴィーノとフェリシアーノという年子の孫がいるが、何につけてもフェリシアーノは器用で飲み込みが良く、逆にロヴィーノは不器用だ。

だから2人の両親は、ポケモンと自分だけで旅をする事になるトレーナーとして送りだすには、フェリシアーノはとにかく、ロヴィーノはまだ早いと判断して、今回はフェリシアーノだけという事で父親に頼んだのだ。

それでもロヴィーノだってポケモンは大好きなので、弟がトレーナーになるのだったら自分だって…と思うのは当然の成り行きだった。

来年じゃ嫌だと号泣するロヴィーノ。
だが、元々申し込みのあったフェリシアーノとエリザ、そしてギルベルトの3人分しかポケモンは用意していない。

もちろん研究所に他のポケモンが居ないかというと居るのだが、あまり育ち過ぎたポケモンは新米トレーナーの言う事を聞いてはくれないし、他人に譲渡するには産まれて12年以内のポケモンが好ましいとされているので、その範囲のちょうど良いポケモンと言うのがいないのである。

新米トレーナー達以外にも譲って欲しいと言うトレーナーや愛好家などに譲ってしまっていたので、急にあと一人分と言われても用意は出来ないのだ。



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