「で?大事な話って?」
これはもうあちらも回りくどいことは望んでなさそうだし自分も望んでいないので、ちゃっちゃと済ませたほうが良さそうだ。
「今のイギリスの状況」
と、実にシンプルなものだった。
「へ?なに?もしかして坊ちゃん、今プーちゃんのとこ?」
驚いたフランスが思わずそう言うと、プロイセンの視線が鋭くなる。
「…何?」
と、急に緊迫する空気にそう聞くと、プロイセンは、はぁ~とため息を付いて
「やっぱり記憶喪失って嘘かよ」
と、吐き捨てるように言った。
あ…しまった…
今日は記憶喪失になってイギリスの事を忘れている設定だった…と、そこでフランスは思い出すものの、まあいいかと開き直る。
「昨日の話…もしかして坊ちゃんにチクった?」
自分が好ましくないと思うことには参加しないが、いきなりそういうおせっかいをするタイプでもないと思ったのだが、判断ミスだっただろうか…と思って聞くと、これにも
「言ってねえよ」
と、短く答えが返ってきたので、続けて
「じゃあ、なんでか知らないけど坊ちゃんがお前んとこ駆け込んだってこと?」
と、聞くと、プロイセンは首を横にふって、
「いや?俺様がご招待した」
と、また気になる事を口にした。
「え?どういうこと??」
と、なんとなく嫌な予感はするものの真意がわかりかねてさらに尋ねると、プロイセンはギロリとこちらを睨みつけながら、
「騙されて意図的に傷つけられて傷ついてる相手を保護してこれからずっと守って行くことにしたっつ~ことだよ」
と、何故か怒りをにじませた口調で言う。
「なにそれっ?!ちょっとまさかお兄さんが坊ちゃん好きなの知ってて寝取ったとか言わないよね?!」
何故自分が怒りを向けられているのかわからない。
むしろ怒るのは自分の方ではないのか。
「寝てはいねえよっ!」
「当たり前だよっ!良いから坊ちゃん返しなよっ!
プーちゃんに限ってそんな卑怯な真似するとは思っても見なかったよっ」
互いに互いの声で感情が高ぶって声を荒げる。
「卑怯はてめえだろ…」
と、その瞬間、プロイセンがフランスの襟首を掴んで、さきほどとはうって変わった低い声で言った。
「何故イギリスを無意味に傷つけた?
俺様はちゃんと忠告したよな?
──馬鹿なこと考えねえで、ちゃんと普通に告白しとけ。
あんま馬鹿な真似すると後悔することになるかもしれねえぞ?─
…って……。
それがなんだ?自分が満足したいからってだけで、惚れてるはずの相手を騙して傷つけて…愛の国が聞いて呆れる!俺様はそんなの愛だなんて認めねえっ!!」
「ギルちゃんには関係ないでしょっ!」
「関係ないわけあるかっ!!
俺様は黙って諦めるつもりだったんだっ!
ずっと好きだった!初めて会った時からずっと。
でもイギリスは俺様が生まれる前からずっとお前と一緒に居て、イギリスにとってお前といることが幸せなんだろうと思って、黙って諦めるつもりだった!
イギリスが幸せになるなら、俺様が辛い思いすることくらいたいしたことじゃないっ、そう思ってた。
お前のエゴでイギリスが騙されて踏みにじられて傷つけられるために諦めたわけじゃねえっ!!」
「詭弁だねっ!お兄さんが坊ちゃんを騙したって言うけど、お兄さん騙して坊ちゃん掠め取ってるプーちゃんに言われたくないよっ!!
友人騙して恋人かっさらったなんて周りが知ったらみんなどう思うだろうねぇっ!」
「誰に何言われようとかまやしねえよっ!
批難や危険なんてとっくに覚悟してらぁっ!
優先することはイギリスの気持ちだけだっ。
名誉も地位も交友関係も失くすことだって、命だって当然かける覚悟がなけりゃあ、俺様は何をおいても守るなんて言いやしねえっ!
世界を敵に回すくらい上等だぜっ!
てめえのちゃらい覚悟の愛と一緒にすんなっ!!」
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