そんな事を思いながら会議場へ。
まあフランスもラテンの例に漏れず時間にルーズなところがあるので、また遅刻ぎりぎりか、あるいは遅刻なのかもしれない。
今日は遅刻魔なイタリアやスペインが珍しく揃って遅刻をしていないので、空席はフランスの席だけ。
さらに珍しいことに、いつもなら開始時刻になって空席があると目に見えて不機嫌になるドイツが特に不機嫌な様子もなく、淡々と議長席についている。
そんななか、ついに会議開始時刻になった。
「あ~、先に言っておく」
と、そこで開始の挨拶もそこそこにドイツが驚くべき事実を口にする。
「実は今日はフランスが会議前に転倒して医務室に運ばれた。
ぶつけたのが頭なので一応大事を取って今日の会議は欠席するので、フランスに大きく関わる事案は予定としてはないが、何か発生するようなら審議だけはして、結論は次回に持ち越すこと」
その言葉に一瞬室内がざわつくが、ドイツがよく通る声で
「静粛に!その話は終了だ!会議を開始するぞ!」
と、宣言すると、何事もなかったように会議が始まった。
まあこれが人間だったら大したことなのだろうが、丈夫な国体のことだ。
頭を撃ち抜かれたとかではなく、たんにぶつけた程度なら心配はいらないだろう。
みなそんな認識で、イギリス自身も
(午前中の会議が終わったら医務室にからかいに言ってやるか~。
まあどうせ怪我してこれ幸いとさぼってるんだろうし…)
などとそう気には止めていなかった。
なにより重傷なら自分の所にくらいは連絡がくるだろう。
なにしろ隣国で腐れ縁で…仕事的にもプライベートでも誰よりも距離が近い。
その自分に主催のドイツからもフランス当人やフランスの秘書からも何も連絡がないということは大した怪我ではないということだ。
そう思ってイギリスも会議に集中することにして、おそらくプロイセンが作ったのであろう、非常に几帳面で綿密な会議資料に視線を落とした。
そうして時間中はすっかり会議に集中して忘れていたが、午前中の会議が終了して昼休憩に入ったところでイギリスはフランスの事を思い出した。
なにしろ本当なら一緒にランチを取る約束をしていたのだ。
(…別に心配とかじゃなくて……一応約束してたからな。
ランチをどうするか確認したいだけだ)
と、誰が聞いてきているわけでもないのに脳内でそう言い訳をして、会議室をあとにする。
医務室は同じ階の奥。
イギリスは会議室を出るとまっすぐそちらに向かった。
そしてドアの前。
(…ランチの約束だが、転んで怪我したときいたがどうする?…とか言えばいいか…)
と、頭の中でかける言葉を反復しながらノックをすると、案の定、別につらそうとかではなく、中からはごくごく普通の声で
「どうぞ~」
と、返ってくる。
ああ、これはやっぱり怪我にかこつけてのサボりか~と思いつつ、
「邪魔するぞ」
と、イギリスはドアを開けて室内に入った。
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