お兄さんは頭を打ったことにしました_7


ちらりと覗く座席。
いつもの指定席。
イギリスの隣のフランスの席は未だ空席。
今日は一日医務室らしい。

まあ、今日はフランスの国益に関わるような案件はねえしな
そうなりゃ、あいつならこれ幸いとサボるのも当たり前か……

なにしろストライキ国家である。
頭を打ったなどという大義名分があるなら、自国に影響する案件のない会議など出るわけがない。

(あ~あ、イギリスもなんでフランスなんだろうな……まあ刷り込みなんだろうけど

逆にイギリスの仕事に対する姿勢は自分たちに近い気がする。
基本的にはきちんと出席、真面目に参加。

フランスと違って今日も頑張ってるよな~と、なにげなくそのイギリスに視線を向けたプロイセンは、そこで固まった。

仕事となればいつもポーカーフェイスを貫くイギリス。
今も淡々とメモを取り、資料に目を走らせ、時折手をあげて意見を言っている。

いつもと全く変わらないように見える。
そう、おそらく皆にはそう見えているのだろうが、そのグリーンの瞳が同様に揺れているのがプロイセンにはわかる。

だってずっと見てきた。
言葉に乗せることが出来ないイギリスの気持ちを知りたくて、いつだって注意深く見つめ続けてきたのだ。
誰にわからなくてもプロイセンにはわかるのだ。

何があった?何が起こっている?

もしフランスが重傷のような事になっているなら主催国のスタッフの中心になっているプロイセンに連絡がくるはずなので、それはないはずだ。

今すぐかけつけて事情を聞きたいが、仕事は仕事だ。
イギリスだってそれは望まないだろう。

プロイセンは午前中とは別の意味で感情的には上の空で、それでも切り離された理性が淡々と仕事だけこなしていく。

そうしてジリジリしながら仕事をしているうちに、ようやく会議の終了時間。
午前中とは違い今回はモニターをつけたまま室内をガン見していると、会議が終わって若干気が緩んだのだろうか相変わらずのポーカーフェイスではあるが若干顔色が悪くなったイギリスが、最終日だということもあって割合とゆっくりしている国々の中で唯一手早く荷物をまとめて、足早に会議室をあとにした。

そのタイミングでプロイセンも部屋を出ると廊下に出たイギリスの手を捕まえて、自分がいた個室に引きずり込む。

そして
「俺様、5分で片付けるから、ちょっと待っててくれ」
と、言うと、プロイセンは手早く私物をバッグに収納してノートPCの電源を落とし、それを片付けておいてくれるように部下に一報したあと、イギリスの腕を掴んで駐車場へ。

そして有無を言わさず自分の車の助手席に押し込むと、車を発進させた。



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