「んで?何故今日はわざわざスペインを外して俺様だけ呼んでその話なんだよ?」
黙っていると泣きそうだ。
だから後ろを振り向いてビールのおかわりを注文しつつ、あえて本題からほんの少しだけずれた質問をしてみると、フランスからは
「だってあいつペドなんだもん」
と、またずいぶんとずれているように思える返答が返ってきた。
正直意味がよくわからない。
本当に考えても考えても意味がわからないので頭をひねっていると、フランシスが肩をすくめて言った。
「つまりね、坊ちゃん童顔じゃない?
老大国ってくらい年取ってるはずなのに童顔じゃない?
たぶんずっとこのまま童顔な気がするからペドからすると理想の相手かなぁと。
元々スペインも昔は坊ちゃんのことすごくお気に入りだったし、下手にこういう話すると、危険な気がするのよねぇ…」
片手を頬にあて、はぁ~っとわざとらしいため息をつきつつ言うフランスに
「…で?俺様は大丈夫ってわけか?」
と、少しイラっとしながらも聞くと、その苛立ちは少し伝わってしまったのだろう。
フランスは
「ああ、違うの。別にDTのギルちゃんになら取られないとかそういうことじゃなくてね、単にギルちゃんは異性愛者だから大丈夫かな~って」
と、少し焦ったように手をひらひらと横に振った。
………色々突っ込みたい。
お前、それフォローになってねえ!
むしろわざわざ口に出して否定するあたり、本当にそう思っているんじゃねえか?
あと、俺様、いつ異性愛者だって公言したよ?!
いや、別に同性愛者なわけでもないけど……好きになった相手がたまたま同性だっただけで……
脳内でメリーゴーランドのようにぐるぐるする諸々をしかしプロイセンは無理やり押し込めて、この不愉快な話題を少しでも早く終わらせるべく、
「まあ、そのへんはどうでもいい。
で?今日は単にノロケたくて俺様を誘ったってことか?」
と、促した。
もしそれを肯定されたらさっさと切り上げて帰ろう、そう思ったわけなのだが、そういうわけではないらしい。
フランスは少し眉尻をさげて
「う~ん…ノロケられるところまで行けたら良いんだけどねぇ……」
と、またため息をついた。
まどろっこしい。
こちとら数百年越しの初恋が失恋に終わって早く家に帰って泣きたいんだから、さっさと本題に入れっ!
そう思いながらも切り捨てて席を立たないのは、もし何か揉めていて失恋してもまだ愛しい初恋の相手が少しでも傷つかないようにという、悲しい恋心のためである。
我ながら未練がましいと思いつつ、
「付き合い始めて何かトラブってるとかか?」
と聞くと、フランスは首を横にふった。
するとふんわりとしたはちみつ色の髪が揺れる。
戦闘となるとヘタレで中身も変態じみたところがあるが、外見は昔から欧州随一と言われるくらいに優雅で美しい男だ。
しかもその気になれば自分みたいな武骨な戦闘国家と違って、甘やかで耳に心地いい愛の言葉がスラスラと出てくる。
それでなくてもスタートから違うのに、さらにそれだ。
元々敵うわけがなかったのだ…。
「なんとか付き合うまで持っていきたいんだけど…」
というフランスの言葉に、プロイセンはやけくそのように
「お前が口説けば普通にイギリスは受け入れんだろ。
なんのかんの言って最近特に仲良いし」
と言ってビールをあおると、フランスは
「それじゃ駄目なのよ~」
と、またわけのわからないことを言う。
「あ?何が駄目なんだよ?」
もう色々本当にやけくそだ。
とことん聞いてやる!とプロイセンがまた空になったジョッキを手におかわりを注文すると、フランスはまだ1杯のワインをチビチビなめながら言った。
「お兄さんね、たまには坊ちゃんの方から愛の言葉がほしいなぁと思うわけ」
「あぁ?」
「だって、お菓子を手に訪問したり、ご飯を作ったり、いつだってお兄さんの方から坊ちゃんに愛を与えてるわけじゃない?
たぶん付き合ってもそんな感じだと思うしね。
だから付き合うときくらい、坊ちゃんの方からいいよってくれないかなぁとか思ってるのよ」
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