あ~ちゃん会議inギルベルトの執務室…での事。
お姫様は絶対に1人にしない。自室にいる時以外は3人のうちの誰かが絶対に一緒にいること、そして、自分が気づかないうちに何かやばい事態になってたら困るので、互いに自分が一緒にいる時のお姫様の様子を報告しあおう
という主旨で始まったこの話し合いは、もう彼女が乗船した時から1ヶ月たつ今日でも当然続いている。
今日はギルベルトは航路の割り出しや方向性を決めたり、他勢力に対して敵対するか共闘するかなど、どう接していくかを専属の人間と話し合ったりと、なかなか忙しく、フランシスは直前に寄港して食材を多数調達したので姫君のためにお菓子をと、こちらもなかなか忙しかった。
だから必然的に、戦闘時以外はのんびりと過ごしているアントーニョに、監視&護衛役がまわってくることになる。
正直、いろいろが大雑把なこの男に任せるのはギルベルト的にはあまり気がすすまないのだが、そのアバウトさゆえに緊張させないからだろうか、お姫様はわりあいと懐いていた。
そして今日の報告時の第一声が、冒頭の言葉で……
「何が”あかん”のよ?何かあったの?」
と問えば、返ってきた言葉が
「今日な、夕方、夕焼けがめっちゃ綺麗やったさかい、あーちゃん連れて見張り台まで登ったんやけど……」
で、ギルベルトは最後まで聞かずに、アントーニョの後頭部を叩きたおした。
「おまえっ!お姫さんになにさせてやがるっ?!!
落ちたらどうすんだっ!!!」
と、思わず声を大きくすれば、アントーニョは
「せやかて、あーちゃんが登ってみたい言うたんやもん。
ええやん!親分がついてたら落とさへんわ」
と、ぶ~とブーイングしながら叩かれた頭をさする。
これは…もう、互いに譲らない部分だろう。
お姫様に対する”絶対的な安全”の感覚が慎重方向にぐ~っと寄っているギルベルトと、”死なない程度に楽しく”と、逆方向に突っ走っているアントーニョだと、どれだけ話しても平行線だ。
そこで両者がぶつかって爆発が起きる前に、と、フランシスは慌てて間に入ることにして、話題をスライドすることにした。
「で?まあやっちゃったことは今更言っても仕方ないから、とりあえず先に行こう、先に。
お嬢ちゃんの何が駄目だったのよ?」
と、物理でも2人の間に入って聞くと、アントーニョは両手で顔を覆って、
「めっっっちゃ、可愛え…!!」
と、叫ぶ。
それに生温かい目になるギルベルトとフランシス。
いや、確かに可愛いけど?可愛いけど、いまさらなに?
と、無言で視線を送る2人に構わず、アントーニョは今日の見張り台での会話を披露。
「な?あのこほんまはお姫さんやなくて、天使ちゃう?
親分、あの子の背中に羽根が見えた気がしたわ。
ほんまに空飛べそうやったっ!」
と、さらに力説。
そして最後に
「空に飛んで行ってしまわんように、しっかり繋いどかなあかんでっ!!
もうそばで監視はもちろんのこと、逃げられへんように手ぇつないどかなあかんっ!!」
と、最後に爽やかに見えて意外に粘着質な本質を見せて、報告を終えた。
お姫様のことはフランもわりあいと気に入っているし、自分もたいがい拗らせてはいるけれど…実は一番拗らせてやばいのはこいつだったのか?
と、それを聞いてギルベルトはため息。
そして隣でそれにかぶせるようにフランシスがため息を付いて、その日の悪友3人によるあーちゃん会議は終了したのだった。
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