おかしな状況は収まったのではないかと思われる。
本当にアレは何だったのだろうか…
非常に珍しいアレルギーか?と一時は思ったものの、それなら未だ花に囲まれている状況で収まっているのはなぜだ?
もし花のアレルギーの一種だとすると、今でも発症しているはずである。
となると…本当になんなんだ?
しばらく体育座り状態でそんなことをツラツラと考えていたギルベルトだが、ふと隣で花嫁がピクリと動いたのに気づく。
そこですべての思考は中断だ。
やるべきことは可能性の模索ではなく、物理的なケアだろう。
「…ごめんな、アルト。
俺様ちと暴走したっぽい。
大丈夫か?身体痛くないか?」
と、とりあえず、乱れたドレスの胸元を整えて自分の上着をかけてやる。
今回は飽くまでアーサーに責任はない。
たとえ何かアーサーから発せられていたとしても、そこは8歳も年齢が違う、いわば大人と子どもと言っても良い歳の差なのだから、暴走を押さえる責任は絶対に自分の側にあったのだ。
ということで、自分が一方的に悪いと、ギルベルトはアーサーの側の諸々はオールスルーで、暴走してしまった自分についての謝罪のみを口にしたが、アーサーはそれでも一気に真っ赤になる。
今回は飽くまでアーサーに責任はない。
たとえ何かアーサーから発せられていたとしても、そこは8歳も年齢が違う、いわば大人と子どもと言っても良い歳の差なのだから、暴走を押さえる責任は絶対に自分の側にあったのだ。
ということで、自分が一方的に悪いと、ギルベルトはアーサーの側の諸々はオールスルーで、暴走してしまった自分についての謝罪のみを口にしたが、アーサーはそれでも一気に真っ赤になる。
かけられた上着で半分ほど顔を隠してわたわたと動揺している様子は可愛いが可哀想なので、羞恥で本泣きになる前に…と、ギルベルトは片手で頭を撫でながら、片手で天井を指差した。
「ほら、すっげえ星空。
さすが高原だよなぁ…式はグダグダになっちまったけど、こんだけの花に囲まれて満天の星空って雰囲気なくね?」
「…ホントだ……すごい……」
子どもらしく気が移りがちな花嫁は、涙の残る大きなグリーンの目で頭上の星々をみあげる。
そんな風にアーサーが頭上に気を取られているうちに、ギルベルトはそっと身を伸ばして祭壇の上の指輪を手にとった。
同じデザインのシンプルなものだが、パートナーの色合いに合わせて、ギルベルトの方は金に小さなペリドットが埋まっていて、アーサーの方はプラチナにルビーが埋まっている。
──病めるときも健やかなときも…これから俺様の隣は唯一アルトだけ。俺様が守って慈しんでいくのもおまえだけだ。
アーサーの手を取って細い指先にちゅっと口づけたあと、ギルベルトはそう言って薬指に指輪をはめてやる。
そうして自分の指輪の方をアーサーに渡すと、アーサーはギルベルトの手を取って、おそるおそるその薬指に指輪をはめた。
「…というわけで、順番がめちゃ逆になった気もするけど、誓いの口づけな?」
と、なんとかリカバリに成功して、ギルベルトは花々の中に放り出された薄いマリアベールを拾って花嫁の頭上に戻すと、少し苦笑して、それでもそっとその小さな唇に口づける。
ひどく緊張した様子で目を閉じる花嫁は幼気で清らかで、本当についさっきに自分自身の手で暴いてしまったにも関わらず、何も知らない新雪のように真っ白に見えた。
本当に色々予定が狂ったというか…そもそも、こんな幼い同性の花嫁に欲を感じるなんて思ってもみなかったのだが、これでまあなんとか、式もどきとしては綺麗な思い出を残してやれたのではないだろうか……
心底ホッとした。
そう、あのおかしな香りや衝動が去って本当にホッとしたのだが、実はこれが次の波乱への幕開けだということを、ギルベルトは知る由もない。
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