フェイクorノットフェイク、ソレが問題だ_ギルベルト・バイルシュミット2

世の中にこんなイケメンて存在するんだと、目を開けて眼の前の人物を見て、まず驚いた。


だって全てが完璧だ。

髪はさらさらの銀髪で、きれいな切れ長の目はなんとピジョンブラッドルビーのような澄んだ赤。
鼻も口も顔のパーツ全てが完璧に一番美しく見えるであろう位置に配置されていて、もうなんだか神々しいばかりだと思う。

顔だけじゃない。
体格だってやや細身に見えるが、どうやら料理をしていたらしくエプロンをつけて袖をまくっていて、その袖から伸びた腕はすごい筋肉質だ。
そう思ってみると全身鍛えてますと言った感じの、引き締まって均整の取れた身体をしている。

長兄に言わせるとこれで大財閥の長子で資産家で仕事も出来て人望も厚いとのことだ。

そんな相手を目の当たりにすると、自分みたいな人間が契約上とはいえ隣に立つなんて、本当に申し訳ない気がしてきた。

しかも、そんな申し訳ない人間なのに、仕事で疲れて帰ってきた相手をきちんと迎えるどころか、初対面なのに眠りこけて、相手に料理までさせているというのが、我ながらありえない。

相手もどこか困った顔で自分を見ているような気がするので、色々と期待はずれだったのだろうと思うと、弱いと自覚している涙腺が決壊しかけた。

そこでさらにお手上げですとばかりに両手を挙げた相手の口から出てきたのは、

「俺様はギルベルト。ギルベルト・バイルシュミット。
この部屋の持ち主だ。怪しいもんじゃねえ。
普通に仕事に行って普通に帰宅したらお前さんがそこで寝てたわけなんだけど…お前は誰だ?」

という言葉で、期待はずれどころか、まさかコレではないだろうレベルに思われていると思ったら本当に泣きたくなった。

……というか、泣いた。


いいたい言葉は嗚咽に飲み込まれて相手に全く伝わらない。
これではますます嫌がられる

そう思って焦れば焦るほど、しゃくりが止まらず、いい加減過呼吸を起こしそうになってきた時、相手ギルベルト・バイルシュミット氏が言った。

「まあ落ち着け。
とりあえず飯食って落ち着いたら話そうな?
なんかあるなら相談乗るし、帰りたいなら送ってやるから」

なだめるように頭を優しく撫でながら……

ああ、本当に、長兄が言っていた通り、良い人なのかもしれない。



「…いただき…ま…す…」
と、言う言葉はなんとか言えて、手を合わせてカトラリーを取る。

ホカホカと湯気がたっている料理はとても美味しそうだ。
牛肉の煮込みは柔らかくて、濃厚な味わいなのに甘酸っぱくてさっぱりしている。

口に入れて咀嚼したとたん、このところ食事もまともに喉を通ってなくて、ひどく腹が減っていたことを思い出した。

空腹を別にしても、どこか温かみのある食事は美味しくて、我ながら欠食児童のような勢いで食べていたと思う。

すっかり食べ終えて、一息つくと、最後にデザート。
たっぷりの生クリームとフルーツが添えられたプリン。

これが絶品だった。

優しい卵と甘いクリームそして少し苦味のあるカラメルソースは幸せの味だ。
美味しくて幸せでひたすら匙を口に運んでいたら、あっという間にあと数匙になってしまって、もったいなくなってちびちびと食べていたら、正面に座っているギルベルトが小さく笑う。

そして

「悪い。俺様帰る前にちょっと軽食つまんでたから腹いっぱいになっちまった。
良ければ食わないか?」
と、こちらにプリンの器を差し出してくれるではないか。

美味しい美味しい甘いプリン。
その瞬間に言うべきこと、取るべき態度も全て吹っ飛んだ。

「食うっ!」

とほとんど条件反射で答えて二人分のプリンを堪能させてもらったが、相手は怒ったり不快感を感じた様子もなく、穏やかな様子で砂糖も入っていない苦そうなコーヒーを澄まして口に運んでいる。

そんな仕草一つ一つがなんだか大人びていて──まあ実際大人なのだが…──すごく絵になっていて、思わず秘かに見惚れてしまった。


確かにこれは長兄が言っていた通り、相手が女性だったら気が変わらないうちにと大慌てで嫁入り支度を整えて血相を変えて駆けつけてきそうだ…と、思う。

ギルベルト・バイルシュミット

初対面の印象は長兄の言葉に違わず、本当に非の打ち所がないくらい、完璧な男性だった。



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