そんな話をしているうちに皿洗いが終わったらしい。
「ふ~、皿洗いなんて久々にしたよ~」
同じく皿洗いを終えてダイニングに顔を出すフェリシアーノとルートと女性陣。
そこでギルベルト達と同じく洗い物を出さないように紙コップにコーヒーを注いで、しばらく小学校時代の昔話などをしていたが、ふいにフェリがハっとして
「あ…」
と、声をあげた。
と、その声に顔を覗き込むルート。
「お風呂場にペンダント忘れて来ちゃった。4人でお揃いの。取ってくるね」
と立ち上がるフェリシアーノの腕をルートが掴んで言う。
「危ないからついていこう。空手部が来るかもしれんしな」
「うんっ!ありがとう!!」
と、ぱぁぁ~と笑みを浮かべるフェリシアーノ。
女子高生3人娘はそれを微笑ましげに見つめている。
「じゃ、ちょっと言ってくるね」
と、3人娘に振り返りざま笑顔でウィンクするフェリシアーノに
「うんっ!ゆっくりしてきなよっ!
ふぁいとぉ~!!」
と、応えるジェニー。
残り2人もそれにウンウンと大きく頷いていて、その3人娘の反応にフェリシアーノは、あ…と、思い出したようにルートを見上げた。
それに珍しく小さく笑みを浮かべて頷くルート。
そこでフェリシアーノはまたふわりと嬉しそうに微笑んだ。
「あ、あのねっ、みんなゴメン!
俺、ルートがどう思うかわかんなかったから、俺の側の気持ちしか言ってなかったんだけど、本当はちゃんと両思いなんだっ」
公にできるのが嬉しくてたまらないと言った様子のフェリシアーノに、女性陣も当たり前だが怒ったりすることなく、
「なんだ~!そうだったんだっ!あたしらこの旅行中にくっつくように協力しようと思ってたのに」
「ま、でも良かったじゃない」
「うん、ルート君しっかりしてそうだからふわふわしたフェリにはお似合いだねっ」
などと祝福してくれる。
それにまた、お礼を言って、フェリシアーノは大きく手を振りながらペンダントを取りにダイニングをあとにした。
そして残ったギルアサと3人娘。
「ね、ペンダントってあれかな、ルートくんとおそろいとかだったり」
「そう言えば、物にあんま執着しないフェリにしては慌ててたよね」
などと始める女性陣に、ギルが
「ああ、ペンダントってのは、こいつ。
俺らが知り合ってちょっとしてから、アルトが4人でずっと仲良くできるようにって四葉のクローバーの刺繍のペンダント作ってくれたんだ」
と、チェーンを掴んでシャツに隠れていたペンダントを出して見せる。
それにまたはしゃぐ女性陣。
(それでも…ギルと俺がカップルって考えにはたどり着かないんだな……)
と、一歩引いたところでコーヒーを飲みつつアーサーは思った。
そして、無骨だが真面目そうなルートと可愛いフェリはお似合いに思えるが、見るからに優秀なイケメンのギルと貧相なフツメンの自分はそう思えないんだな…と。
さきほどの食事の支度の時の会話からすると、シンディは彼氏がいるがギルを好きなんだと思うし、その他の3人娘にしたって、ずいぶんとギルに楽しげに話しかけている。
ギルの方もあれだけみんなと楽しそうに話しているのに、フェリのようにアーサーとの関係をカミングアウトする様子はないので、たぶん貧相な男の恋人持ちなんて恥ずかしいのだろう。
そう思うと、なんだかひどく落ち込んだ。
その場にいるのが辛くなって、フェリシアーノと合流しようと浴室に足を向ける。
客もいないのでやや照明を落とし気味なため、薄暗い廊下。
窓から見える外はすでに真っ暗だ。
そんな中でハラハラと何か白い物が空から舞っていて、なんだろうと目を凝らすと、少し離れた所に桜の木。
なるほど。舞っているのは桜の花びらか…と、納得した。
そう言えば…桜の根本には死体が埋まっている…なんてよく言うよな…と、ふと思い出して、そしてそれを恐れるよりも羨ましいと思ってしまう。
綺麗な桜を咲かせる肥料になれる死体の方が、何もかもに優れた美しいギルベルトの横に居て邪魔になっている貧相な自分よりも素晴らしいんじゃないだろうか…
そんな事を考えていると、涙がハラハラ流れてきて、アーサーは慌ててそれを拭った。
そしてフェリと入れ違いにならないように浴室に急ぐ。
走って浴室までたどり着くと人の気配がするので、フェリとルートだろうと思ってガラリとガラス戸をあけた…その時だった。
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