リトルキャッスル殺人事件_幽霊は桜と共に舞う1

そして食事。


また絡んでくるかと思いきや、今度はマイクとダニーが何故か険悪状態らしい。
お互い顔を合わせようともせず、リックとユージンが顔を見合わせている。

「いったい何があったん?」

フェリシアーノがコソコソっとシンディに聞くと、シンディはちょっと悲しげにうつむいた。

「えと…ね、ちょっと色々誤解があって…マイク、私がダニーと浮気したんじゃないかって…」

「あちゃ~」
フェリシアーノはジェニーと顔を見合わせる。

「まあ…男二人で揉めてる分には良いけど、シンディに矛先向くようなら俺らんとこ逃げて来なね?
ルートいればどうとでもかくまってもらえるから」

少し心配そうに言うフェリシアーノに、シンディは微笑んだ。

「うん、大丈夫だよ。でもありがとフェリ」
「ホント…遠慮しないでいいからね?」
「うん」
ああ、本当にこんなロクでもない男とはこれをきっかけに別れればいいのに…とフェリシアーノは思う。

「ジェニー達も!あっちの男連中多分気がたってるから、ホント一人にならないでね」
それと同時にフェリシアーノは他の3人にも声をかけ、ルートも

「危険を感じたらドア叩いてくれたらいつでも起きるから遠慮しないで起こしてくれ」
と、殺気立つ男性陣にチラリと目を向けて女性陣全員の顔を見回した。



そして食後…

当たり前に食べっぱなしで各部屋に戻る空手部4人を完全に放置で、今度はほぼ準備を一手に引き受けたギルとアーサーとシンディ以外の女3人組、フェリシアーノ、ルートで皿洗いを引き受ける。

シンディはずっと下で色々働いてたためできなかった自分の荷解きをしに先に部屋へと帰っていった。

そしてギルはそのまま食堂でお茶を飲みながらアーサーと話をしている。



お姫さん、さっきシンディと何を話してた?」

男連中と彼女が二階にあがっていき他がキッチンで洗い物をしていてこの場に2人きりなのを視認して、ギルベルトはそれでもやや小声でアーサーに聞く。

食事の準備中、シンディと2人で並んで話をしているアーサーに、ギルは気が気ではなかった。

フェリシアーノも女性陣も誰も警戒はしていないようだが、今回の不穏さ満載の旅行は元々彼女が発端となっていて、彼女は警戒すべき男連中の1人の恋人である。

宿についてすぐに女性陣に絡んだ空手部4人を伸してしまったことで、アーサーは男連中に恨みを買っている可能性もあるし、それとは別にアーサーが言っていた、自分達3人をシンディが意味ありげに見ていたというのが気のせいでないとしたら、そちらも気になった。

それでなくても過去2回も誘拐されたお姫さんのことだ。
2度ある事は3度あるかもしれない。

そしてその時に過去2回のように無事とは限らない。
むしろ2度も誘拐されていて怪我一つ負わされなかったというのは、とてつもなく幸運だったのだ。

「ん~?
ああ、ギルの包丁さばきがすごいねとか、そんな話をされただけ。
で、俺の方は、元々俺は料理が全く駄目だったんだけど、ギルに教わって多少できるようになったみたいな返事を返した」

「他には?なんか変な事とか言われなかったか?」

「いや、別に?
というか俺と話したいというより、ギルの話がしたいんだと思う。
ギルみたいに何でも出来る友人がいて良いねとか言われたから」

そんなアーサーの言葉に、ギルベルトは盛大にため息をつきたくなった。


そもそもが、アーサーが埠頭で合流した時に彼女が自分達を意味ありげに見ていたという話。

アーサーはギルベルトかルートをみていたのだと思っているが、忘れてないか?
そこに居たのは3人だ。

そう、3人。
自分とルートとそしてアーサー自身だ。

アーサーはキッチンでのことだって彼女がギルベルトについての話をしたいと思っているようだが、ギルベルトに言わせればそんなのアーサーと話すための口実だと思う。

シンディは絶対にアーサーと話すためにたまたま話題に乗せやすい自分の名を口にしただけだろう。

頼むから危機感を持ってくれ!!
と、声を大にして叫びたい。

まあ、持って生まれた性格なんてそうそう変わるものではなし。
そもそもがそういうところも可愛くて好きだということもあり、アーサーが警戒することが出来ないなら、自分が気をつけるしかない。
何があってもアーサーから離れずに側で全てに関して警戒しよう。

ギルベルトはそう心に固く誓って、紙コップに入った苦いコーヒーを飲み干した。



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