とある白姫の誕生秘話──大親友2

「こういう芸事の家ってさ、長男と次男は大切さが天と地ほど違うんだ」

まず語られたのはフェリシアーノの家の事情だった。


ロズプリの家としては名門中の名門のヴァルガス家。

その直系の男子と言えば、ロズプリ界の中ではすごい事なのだが、それでもそれは長男に限るらしい。


名前を継いで、ついでに当たり前の主役を演じる長男。

その一方で、次男以下は“一見はお断りのオーディションを受ける権利があるだけ”で、どれだけ才能があろうとも主役以下の役を他と競わなければならないらしい。

それでいて、あまりに役につけないと、『あの名門の家の子なのに…』と言われるのはお約束。

なので長男以上に芸事に精進するだけではなく、少しでも配役を決める重鎮達の心証を良くするべく、愛想よく立ちふるわなければならない。


さらに言うなら、フェリシアーノ自身も名門の出だけあって、さらに下の人間からは心証を気にされる存在にもなる。

だから優しくお愛想を言われても、その裏では酷評されているなどと言う事は当たり前で、そもそもがあまり心を許せる人間がいないのだそうだ。


仕事を離れて学校などでは、当たり前だがロズプリ関係の子どもなどほぼいないので、色々が理解をされない。

女役の家なので女性らしさを身につけるため、男の子達に混じって乱暴な遊びをするよりは、優しい物腰で女の子に寄りそうフェリシアーノは、当然のように弾かれ、下手をすれば攻撃対象になる。

「そんな時にね、いつもかばってくれたのがルートだったんだ」
と、フェリシアーノは夢見るような目をして言った。

「俺ね、意地悪とか言われ慣れてたけど、それをあんなにはっきりかばってもらったのって初めてだった。
ルートはしっかりしてて頭も良くて、いつもクラス委員とかしてたから、正義感でかばってくれたんだと思うんだけど、俺、すごく嬉しかった。
でね、嬉しすぎて好きになっちゃったんだよね…ルートは普通に友達として見てくれてるんだと思うんだけど…」

──おかしいと思う?
と、言われて、おかしいなんて言えるはずがない。

だってすごくわかる気がする。
自分だってネット上ではあるが、ミアにカミングアウト出来てギルにできないのは、たぶんそれだ。

「わかるっ!…なまじそういう経験ないから、俺も無条件に見返りもなく守ってくれたりかばってくれたりすると、すごく特別になるっ!!」

思わず答える声に力が入る。
身を乗り出してそう言うと、フェリが嬉しそうにうんうんと頷いて、互いにぎゅっと手を握り締めた。

「やっぱりっ?!アリアちゃんなら分かってくれると思ったっ!」
「俺も初めて自覚したけど…ルートさんが上司の弟さんなら、出来る限りフェリに協力したいと思うっ!」

わかりあえて嬉しい…すごく嬉しい。
実母が亡くなって以来、初めて持った密接な人間関係だ。

もちろん、アーサーの周りにいた面々と違って

「あ、でも…」
という言葉だけで

「うん。アリアがアーサーな事は秘密にするね。
一般社会だと色々面倒な事が多くなるし。
でも、たまにうちにきて“アリア”になって“ミア”と一緒に遊んでね?」
と、アーサーの事情も察して気遣ってくれる。


ゲーム内の“ミア”の頃からとても信頼のおける良い友人だと思っていたのだが、実際に会ってみて余計にその思いが強くなった。

こうして思いきってミアに会いに来て、リアルのフェリシアーノと知り合ったことで、このあとのアーサーの人生は大きく変わっていくのだが、その事をまだ彼は当然知ることはない。



Before <<<      >>> Next (2月6日0時公開予定)




0 件のコメント :

コメントを投稿