とある白姫の誕生秘話──ナイト三大勢力4

『皆さん、こちら私のお友達のアリアちゃんと、そのナイト様のギルさんです

ギルとアリアが待ち合わせ場所の洞窟についた時にはすでに緊迫した空気が流れていた。

ピリピリとした空気の中、にこにこと佇むミア。
このギスギスした空気に全く動じないのはすごいとギルですら思う。

アリアはすでに空気に怯えてギルの後ろに隠れている。
そんな中での
『アリアちゃんは私の大切なお友達なので仲良くして下さいね』
と言うにこやかなミアの宣言に、シンとして張りつめていた空気がこちらに向けて動き出す。

おそらく警戒されているのだろう。
裏に敵意のようなものを含んだ尖った視線を浴びて言葉のないアリアの代わりに

『最近、ミアが粘着されているストーカーがうちのお姫さんに近づいててな。
その相談がきっかけでうちのお姫さんが親しくさせてもらうようになったらしい。
まあ俺様はうちのお姫さんの附属品だと思ってくれて構わないので、よろしく頼む』

と、ギルが笑みを浮かべて言うと、空気が少し揺らいだ。


『あ~!アリアちゃんて、この前ミアのクラス装備取りに来てたよねっ!
あの時、一部で可愛いって騒いでた人達いたけど、そっか~、ちゃんとナイトがいたんだね。
あ、俺はキロ!
メインはご覧の通りシーフなんで、ナイトの先輩達と違って守ったりはできないんだけどね。
そういう相談なら俺も乗るよ?女の子は怖いよね、ストーカーとかって』
と、シーフらしく軽やかに駆け寄って来て握手を求める。

それにオズオズと応じるアリア。

(…俺のお姫さんに……こいつ……)
と、その手を凝視するギル。

だが、キロは今度は

『ナイトさんもよろしくっ!
俺、イベント系ギルドも主催してるから、ギルド外の人も大歓迎だし、良ければ声かけるからお姫様と一緒にどうかな?
2人同じパーティに入れるようにするからさっ。
あとお姫様との話とか色々聞きたいなっ!ミアとの後学のために』
と、ギルベルトにも笑顔で握手を求めた。

単に元々フレンドリーなプレイヤーらしい。
そしてイベントギルドの主催をしていると言うだけあって、頭の回転も速そうだ。

ミアにとってお姫さんが同性の友達という扱いなのをいち早く見抜き、それを味方につけるべく、しかし警戒をされないようにと直接ではなくその護衛役の自分にまず誘いをかけるあたりが、非常に賢いと思う。

『キロは色々顔が広いんですよ。
キロのコミュニティにはミアもたまに参加させてもらうから、仲良しのアリアちゃんと一緒できたら嬉しいです♪』

と、その行動はおおいにミア姫のお気に召したらしい。
それと同時にミアの中のアリアの立ち位置はナイトではなく、飽くまで仲良しのお友達と言う事をミアがさらに重ねて言った事で、出遅れた事を悟ったのだろう。

次に動いたのはナイトの1人だ。

『粘着と言うのはもしかしてセイジか?
確かに奴は困りものだな。
ミアの大切な友人なら俺にとっても大切な友人だ。
俺はアーク。
何か困った事があったら言ってくれ』

と、しかしキロほど頭の回転が速くないらしいこの騎士は、それをアリアの方に言う事で二つのミスを犯している。

一つはアリアの護衛役であるギルに警戒心を起こさせる事。
そして何より大きなミスは、彼にとっての大事な姫君であるミア以外に声をかけているという形になることだ。

そしてもう一人のナイト、ユーシスはミア以外に興味はないということを主張する事に重きを置いたのであろう。

『ユーシスだ。宜しく頼む』
と、たまたま同席した野良のパーティの挨拶程度の挨拶をしたきり、こちらには一切関知しない姿勢を貫いてきた。

こうして非常に微妙な空気の中、ミアいわく“ミアのお友達との親善”の名の元に、微妙な狩りが始まったのである。



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とある白姫の誕生秘話始めから


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