早く救出しないと殺される可能性が高い。
一刻の猶予もならない。
かといって…物的証拠があるわけでもないのに普通の高校生が家捜しなどさせてもらえる状況じゃない。
さて、どうする……
「ルッツ、この宿ってフェリちゃんの親の友人がやってるって言ってたな?」
ギルベルトはルートを振りかえった。
「ああ、フェリの母親の幼稚舎からの友人だそうだ」
「OK、よく聞いてくれ。
一刻も早くフェリちゃんを救出しないとおそらくフェリちゃんの命が危ないと思う。
で、それには母屋で非常ベルを鳴らしてもらって、離れの人間をみんな母屋に集める必要があるんだが…
他には理由を言わずに後で誤報って事にするようその友人に頼めないか?」
ギルベルトの説明が終わるのを待たず、ルートは自分の携帯をタップしている。
そしておそらくかけた相手はフェリシアーノの親なのだろう。
事情の説明も終わらぬうちに準備する間もなくいきなり非常ベルがなった。
「え?もう頼んだのですか?!」
と、電話の向こうの相手に言いながら焦るルート。
ギルベルトも一瞬焦った顔をするが、まあなったものはしかたない。
「ルッツ、お姫さんを頼む。俺様は風呂入ってて服着てるとでも言っておいてくれ」
電話の向こうには一応礼を言って通話を切ったはいいが、どうしたものか戸惑っていたルートだが、やはりトラブル続きなため気を取り直すのも早い。
「わかった。兄さんなら一人残して来ても平気と思うのも不自然ではないしな。行こう、アーサー」
言ってルートはアーサーの腕を取って立ち上がった。
こうして2人が部屋を出て行ったあと、ギルベルトも立ち上がると一路氷川夫妻の部屋へ。
夫妻がやはり慌てて母屋へ向かうのを確認すると、ソッと中に忍び込んで一直線に目的の場所を目指した。
入って次の間の大きな押し入れのようなタンス。
チラリと下に香炉があるのを確認すると、ギルベルトは祈る様な気持ちでタンスを開ける。
そして中を見て心底ホッと息をつく。
向こうも同じみたいだ。
「時間ないから、このまま抱えてく。大人しくしててくれ」
ギルベルトは猿ぐつわをされて手足をぐるぐる巻きにされたフェリシアーノを肩にかかえあげるとタンスを閉め、一気に離れの外を目指した。
ギルベルトはそのまま自分達の離れへ戻ると、急いでフェリシアーノの猿ぐつわを外して手足を解放し、
「とりあえず説明は後だ、押し入れにでもかくれててくれ」
と、フェリシアーノに指示をして、服を脱ぎながら風呂場に駆け込む。
そして頭からシャワーをかぶるとバスタオルで軽く水気だけ取り、浴衣を身にまとい、部屋を飛び出した。
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