アーサーやフェリシアーノは放置すると危ない目に遭う事もあるという認識は常に持っていたが、ルートに関してはそういう意識が薄かった。
ルートに何かあるなどと考えた事もなかったギルベルトは後悔すると同時に動揺した。
犯人いわく1時間もあれば着く距離なら、ルートが無事なら辿り着くだろう。
もしたどりつかなかったら……
ギルベルトの不安をよそに時間は刻々と過ぎて行く。
そして…21時。
フロントの電話が鳴った。
『時間切れだ。身代金を払う意志がないものとみなす』
とだけ言って、反論する間も与えずに電話が切れた。
青ざめる一同。
和田が即ルートに持たせた携帯に電話を入れるが当然出ない。
フェリシアーノもだが…ルートは一体…
和田は即ルートの捜索指示を出す。
自分もジッとしていられない、とは言うものの…
ギルベルトはリスのような大きな丸い瞳で自分を見上げるアーサーを前に悩んだ。
探しに行きたい…が、アーサーから目を離すのは怖い。
かといって連れて行くわけにも…
「和田さん、姫お願いします。絶対に目を離さないで下さい」
ギルベルトは悩んだ挙げ句、それでもアーサーを和田の方にやると、反論する間も与えず外へ飛び出した。
この世で唯一の弟だ。
何かあってから後悔はしたくない。
ギルベルトは先を行く警官達を追い越して、暗い夜道を走る。
「ルッツ!!どこだっ?!!!」
そして足場の悪い暗い道を走り抜けながらも、たまに立ち止まって草が踏み荒らされた跡がないか探した。
やっぱり自分が行けば良かった…と先ほどから何度も思っている事をまた思う。
弟を危険かもしれない場所に放り込んだ自分のミスだ。
あの時ルートがどんなに言っても、殴ってでも止めて自分が行くんだった。
かけがえのない弟…それを判断ミスで取り返しのつかない状態にしたかもしれない。
アーサーがいなくなった時とはまた違った、それでもどうしようもなく大きな不安感。
「ルッツっ!!どこだ~~っ!!!」
潤みかける目をシャツでぬぐって、ギルベルトはまた走り出しては止まって目を凝らす。
遠くに明りが見える…。
あそこまで行けば少し視界が良くなるか…と、ギルベルトはまた走りかけて、ハッとした。
「ルッツっ!!」
草むらにぼんやりと浮かぶ人影。
ギルベルトは走りよるとルートを抱き起こし、もう条件反射で脈を確認する。
…生きてる……
安堵で力が抜けた。
気が抜けて放心していると、警察が集まって来た。
「…脈はあります…」
放心しつつもそう報告するギルベルトの周りでは、警察が放り出されたスーツケースを回収している。
暗闇で…明りに向かって急いだ時に転倒したようだ。
意識がないというのは…打ち所が悪かったのか?!
また新たな不安がわきあがってくるギルベルト。
「とりあえず…旅館に…」
と、声をかける。
そしてルートは担架にのせられて母屋に運ばれた。
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