青い大地の果てにあるものオリジナル _2_2_ 模擬試合

「丁度いい。俺とアニー、鉄線とトリトマの2対2で技抜きの模擬試合でもするかっ。
茶飲んでても退屈だしな」
大人組のやりとりをよそに、ひのきが言い始める。

その言葉にユリが嫌~な顔をした。


「え~、私は茶飲んでる方がマシ。つか、その組み合わせ卑怯臭くないか?」
ユリの言葉にトリトマがむっとする。

「なんだ?!俺がこいつに劣るとでも?!」
「ん~それもあるけどさ、」

その思わず引きそうなトリトマの不機嫌さも気にする様子もなくユリが頭をかく。

「アニー坊やは純盾だからさ。盾としては兼業盾の私より優秀だから。
ようは...本部最強の矛と本部最強の盾ってわけ。おわかり?」



「んじゃ、組み合わせかえて俺と鉄線で組むか?」

ひのきの言葉にトリトマとアニーが
「冗談じゃない!!」
と仲良くはもった。

「こんな奴の防衛なんてまっぴらごめんですっ!」
「こんな奴前にいたら後ろから殴り倒してやる!」

アニーとトリトマがそれぞれ叫ぶのにひのきは腰に手を当てて小さく息をはいた。


「お前ら...本当に一緒の任務になったらどうすんだよ?
んじゃ、いっそのこと俺とトリトマ、鉄線とアニーで矛と盾の対決してみるか?」

「それは私がやだ。組むならひのきがいい。
フェイロンに負けてるくらいだから私アタッカーやってもひのきには勝てんし、勝てんとわかってる勝負はしたくない」
ユリが即言う。

「僕も組むならひのきが良いです。ユリもトリトマもまっぴらごめんです」
アニーの言葉にユリがピンっとアニーの額をはじいた。

「言うじゃん、アニー坊や。ついこの前までひのき目の敵にしてたくせに」
「あなたよりはマシって事ですよ、ユリ」

今度はユリとアニーが不穏な空気になるのに、ひのきは頭をかかえた。


「んじゃ、ホップならどうだ?俺抜けて鉄線とトリトマ、ホップとアニーで」
「俺、タマと敵対すんのやだ」

ひのきの言葉にホップが即答。


「わかった!俺が盾やる。
んでトリトマと俺対ホップ、アニー、鉄線の3人でどうだ?
トリトマ、これまでの口ぶりならそのくらいのハンデやれる自信はあんだろ?
言っとくけど俺盾得意じゃねえからな」

「フン、もちろんだ」
「タマと一緒ならなんでも♪」
トリトマとホップは即答する。

「アニーと鉄線は?」
二人の返事をきいて、ひのきが残りの二人にうながすと、アニーとユリも渋々うなづいた。


「んじゃ、アームスはホップは機関銃禁止、俺は羅刹封印、鉄線は範囲厳禁な。
そのあたり使うといくら丈夫な鍛錬室でも壊れる」

「了解」
ホップとユリが答える。

「なずなは...怪我人でた時用に待機してくれ」
ひのきの言葉になずなもうなづいた。


「おい、シザー、ちと鍛錬室で模擬試合してくるっ。なんかあったら携帯にかけろ」
とひのきがシザーにむかって怒鳴るとシザーは

「面白そうだな。僕も見に行こう。みなさんも行きません?」
と大人組をうながす。

「そうね。本部組の戦いもみておきたいし」
とルビナスが、
「だな。あとで俺もまぜてもらうか」
とコーレアがそれぞれ言う。

そして双子も交えて結局全員鍛錬室に移動した。




「ユリさん頑張って~!!」
双子が声を揃えて応援する。

「鉄線様~、ひのきく~ん!頑張ってね~!!!」
と、声をあげるのはいつのまにか観客に加わった愛でる会の面々。


「発動っ」
ひのきは日本刀、アニーはセイバー&盾、ユリは三節棍、ホップは弓と、それぞれクリスタルを武器に変える。

「俺は盾のアニー押さえるから、鉄線かわしつつホップつぶせるか?」
ひのきが日本刀を肩ぐちに担ぎながらトリトマに小声で言うと、トリトマは

「フン!お前の力なんぞ借りないでも、なんなら3対1でもかまわんくらいだ」
と鎌を軽く振り回す。

「そういうな。それやられると俺が暇になるしな」
挑戦的なトリトマの言葉を軽く受け流してひのきは肩をすくめた。

「まあ...攻撃は最大の防御をモットーに攻めて行こうぜ」
「もちろんだ」

その言葉は気に入ったらしい。
トリトマはにやりと笑って前を見据えた。


一方ユリ、アニー、ホップの3人組は、どう考えても協調する気のないトリトマを盾のひのきから引き離す方向で話を進める。

「アニー坊や頑張ってひのき押さえてろよ。
そうしたら私とホップで一気にトリトマやるからさ。
あとは3人がかりで...ならつぶせるよな?ひのきでも」

「最悪引き分けには持ち込めますね」
アニーの言葉にユリが渋い顔をする。

「お前なあ...なさけない事言うなよ。
いくら相手がひのきでも3対1で引き分けられたら笑えねえぞ!」

「でも...僕たちの側って考えてみれば純近接アタッカーいませんし。
距離つめられたら逃げ切る事はできても倒すのはきついですよ」

「ん~、むしろトリトマ生かしておいて、タカがフォローで隙ができる時を狙った方が勝ち目ありそうじゃん?」
「ナイスアイデア、ポチ。
あざといけどそれが一番勝算ありそうだな」
「んじゃあ...ユリがトリトマ追いつめてひのきがフォロー入ったら全員でひのき殺りましょう」

「「おっけ~」」
こちらも作戦終了する。


「んじゃ、そろそろ双方作戦タイム終了?」
いつのまにか司会者よろしくマイクを持ったシザーがしきっている。

「こっちはオッケーだ」
「こちらも大丈夫です」

双方言うと、念のため大けが防止になずなが双方に光の加護をかけて、シザーが

「では~、試合開始っ!」
手を上げてさっと振り下ろした。


「行くぞっ!」
小さくトリトマに言うと、ひのきが即跳躍する。

そして
「変形っ!」
といきなり刀を槍にかえてリーチを長くし、一気に最後方のホップに肉薄した。

「げえ!そんなんありかっ!!」
あわてて下がろうとするアニーとユリ。

すると、それを待っていたかのようにひのきはホップに向かって伸ばしていた槍をスルっと滑らせて刃先ぎりぎりを握ると、柄でホップのフォローに向かおうとしていたユリのみぞおちを思い切り突いた。
戻る事に気を取られていたユリがはねとばされる。

「行け!あと任せたっ、トリトマ!」

それだけやってアームスを刀に戻し即フォローに入るアニーと対峙するひのきの横を、ホップに向かってトリトマが跳躍する。

「お前..盾じゃなかったのかよっ」
すれ違い様に言うトリトマにひのきはにやりと答えた。

「攻撃力を先に削ぐのが俺の防御だ。他に防衛手段なんてねえし」
ひのきの答えにトリトマは口の端をあげた。


慌てて弓を構えるホップにトリトマが肉薄する。

「やらせるかっ!」
ユリが咳き込みながらもあわてて棍を構えてフォローに入り、三節棍でトリトマの大きな鎌を絡めとるが、トリトマはそのまま強引に鎌を振り回した。

ズキン!と傷の痛みにユリの手から三節棍が離れる。
そしてそのまま鎌はホップをなぎはらった。

光の加護でかろうじて軽傷ですんだが、ホップの横腹は血でにじむ。


「ユリ君とホップ君はそこまでね。姫ちゃんの手当受けて」
シザーが宣言する。

トリトマはそのままひのきと対峙するアニーに向かった。


いくら最強の盾でも最強の矛一人の相手で手一杯なところに援軍まで来られてはひとたまりもない。
二人がかりで攻められてアニーが沈んで終了した。



「勝者、ひのき、トリトマ組!」
シザーが宣言する。

「おっしゃ~!」
ひのきとトリトマがパンと高い位置で右手と右手を合わせる。


「くっそ~!手加減しろよっ!ひのき!」
ユリが指を鳴らす。

「甘いな。実戦だと誰も手加減なんてしてくれねえぞ」
ニカっと笑うひのきにユリは不服そうにふくれた。

「いいんだ。実戦だったらフル能力使えるから」
「まあ確かに...俺の機関銃とかタマの範囲とか使えたらまた違うさ」
ホップも言うが、そこでフェイロンの言葉が飛んで来た。

「しかし...限定条件化で最大限の戦闘をする訓練も必要だぞ」

「まあ...それはそうですけどね。
限定条件化だったら身体能力がすぐれた攻撃特化が一番有利ですよ。
こっちは盾と遠隔ですし。物理のみだったら勝ち目ないですよ」

ブツブツこぼすアニー。

「いや、最初にタカがホップに向かうふりをして鉄線をつぶそうとしたフェイクを見破って対処していたら勝負はわからなかったぞ」
フェイロンはそれぞれ不満げな3人に苦笑した。


一方見物側では

「すごいのぉ。あのトリトマがすっかり馴染んでおる」
と、シランがウンウンと目を細めた。

「やはり若いもんは若いもんの中に放り込んでやるのが良いんじゃのお」

孫...あるいは曾孫くらいの歳なのだろうか。
20代以上しかいない北欧支部の中で、ポツネンと何をするのも一人だったトリトマを大人コンビはいつも心配していた。

このまま他人に馴染めないまま自分達が去ったらどうなるのかと常日頃気になっていたのだが、どうやら杞憂に終わりそうでほっとする。


「まあ...俺はタカに任せればなんとかしてくれるとは思ってた」
自分の事の様に嬉しそうに言うコーレアに、シザーはクスっと笑った。

「ひのき君も...ここ最近なんですけどね、ここまで周りの面倒見てくれる様になったのは。
それまでも必要な分のフォローは全部引き受けてくれてはいたんですが自主的に全部のとまではいかなくて、できるだけ他と距離置いて巻き込まれない様にって感じだったんですけど、姫ちゃんとつき合いだして本当に丸くなりましたね。
最近では完全に本部ジャスティスのリーダーですよ」

「姫ちゃんというと...なずな君かな?
彼女もまたやんわりと周りをなごませる子みたいだな。
さっきあれだけ人見知りの激しいトリトマがすごく楽しそうに話をしていたし」

コーレアの言葉にまたシザーがまた軽く笑う。

「ああ、姫ちゃんもね、同じなんですよ。
あの子はここ来た頃は男性恐怖症でね、ひのき君とつきあいだしてからなんですよ。ああやって話してくれるようになったのは。
今では本部一の調停役です。
僕とフェイロン君も険悪だった所を彼女に調停されたところで...。
色々な意味で本部最強カップルですね、彼らは。
アームスの相性も抜群ですし」

「なるほど...良いつきあいをしとるんじゃのぉ。
トリトマにもそんな出会いがあると良いんだがのお...」

可愛い孫を心配するがごとくシランがため息をついて、若者ジャスティスの集団に目をむけた。


その後コーレアと、何故かフェイロンまで加わって大騒ぎの模擬試合で、一部へたり込み一部は...コーレア、ひのき、フェイロンの3名だが、整理体操をしている。

「良い汗かいたな」
とにこやかな3人を他のへたり込み組が化け物、という目でみつめていた。

「ちゃんと鍛錬はかかしてないみたいだな、タカもフェイロンも」

コーレアの言葉に

「そりゃあな。体資本だしな」
と二人揃って答える。

「ま、今回一番お疲れさまなのはなずなか。大変だっただろ、怪我人続出で」
ひのきは屈伸を終えるとなずなにかけよった。


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