青い大地の果てにあるものオリジナル_ 1_25_ 赤い靴の波紋

「え~っと...?」

15分後の談話室。
相変わらず涙目のファーの横には何故かアニーもいる。

戸惑うなずなの隣ではひのきが
「アニーいるならアニーに話きいてもらえ」
と、きびすを返そうとしてアニーにひきとめられる。


「僕も話きいてほしいんです!逃げないで下さいっ」
チっと舌打ちするひのき。

「二人揃ってって言う事は...ジャスミンの事...なんですか?やっぱり」

並んで座る二人の正面に腰を下ろしてなずなが聞くと、アニーがため息まじりに口を開いた。

「...と、ユリの事ですね。正確には」

やっぱり...と顔を見合わせて苦い顔をするひのきとなずな。

「とりあえず...どっちか何があったか順を追って話せ。
話すのは...アニーの方がいいか」

ひのきがうながすとアニーはうなづく。


「今日、朝からユリがジャスミンを街に連れ出したらしいんですけど...」

「ユリさんが誘ったなんてジャスミンの嘘かもしれないじゃない!」

と、即ファーがアニーの言葉をさえぎるのに、ひのきは

「ファー黙れ!些末な事はどうでもいい!今度話に口はさんだら俺達は帰るぞ!」
と、不機嫌に言う。

ファーの目に涙がにじむが、とりあえずは黙り込む。

「アニー、続けろ」
ひのきにうながされてアニーが続ける。

「で、午後3時前かな戻ったのが。
で、フリーダムとブレインに報告あったらしいんですが、二人でイヴィル1雑魚3倒してきたらしくて...ジャスミンが第二段階使えるようになったらしいです」

「...めでたい事だろ。そりゃ。ブチブチ言う事ねえだろ」
ひのきの言葉にファーとアニーが顔をみあわせた。

そしてアニーが続ける。

「ジャスミンが...その外出を境にすっかりユリに夢中に...」

「さっさと告らねえお前が悪い」
ひのきが即言うのにアニーはさらに即答した。

「今朝...告白してつきあう事になったんです...」
アニーの言葉になずなが深い深いため息をついた。

「わかりました...ユリちゃんにはよ~~~く注意しておきます。
あの人はたぶん深い意味なくちょっかいかけてるだけなので。
本当にごめんなさい」

「んで?ファーの不満はなんだ?」
アニーの方はこれで無問題とひのきは今度はファーに目をむける。

「ジャスミン...ずるい」
「だから、それじゃわからねえ!」

ブス~っとつぶやくファーにひのきがいらついて言う。


「だって...私はずっとずっと共鳴率上がる様に一生懸命鍛錬続けてたんだよ?
私だって遊びに行けるなら行きたいよっ!
でも今はいつ任務入るかわからないし、遊ぶよりやんなきゃ行けない事あるから一生懸命努力続けてたんだよ?!
それがユリさんと街に遊びに行って色々な所連れて行ってもらって、おしゃれしてユリさんとデートしてて、それで第二段階まで使える様にしてもらってきたんだよ?!
私馬鹿みたいじゃん!!!」

机の上で拳を握りしめて叫ぶファー。
ポロポロと頬を涙が伝う。

「気持ちはわかるが...こればかりはなぁ...。
なにしたら共鳴率上がるかは結局わかってねえし」
ひのきはポリポリと頭をかいた。

自分だって決して器用になんでもこなす方ではない。
人の倍努力してようやく何かをつかめる人間だ。
ゆえに確かにファーの怒りは心情的にはわかる。

一方なずなはすでに携帯に手をかけている。

「もしもし?すぐ談話室にきなさいっ!
いい?!逃げたら二度とボイス使ってあげないからっ!」

あ...怒ってる...。ひのきは苦い笑いをもらした。

なずながこういう命令口調を使う相手は一人しかいない。
相手が誰だかは一目瞭然だ。

「...まったく、あの人は...。人騒がせなんだからっ」
と、ぶちぶちつぶやいている。

「まあでも...鉄線に話きくのはいいかもしれねえな。
ホップにしろジャスミンにしろ第二段階行ったのって鉄線と行動している時だしな」

言ってユリを待つ事10分。

「怪我人を呼び出すなよ...」
悪態をつきながらユリが談話室に姿を現した。

「何が怪我人ですかっ!
怪我人なら怪我人らしくちゃんと医務室で寝てればいいでしょっ!」

なずなが立ち上がってピシっと言う。

「怪我人が街に遊びに行っていいと思ってるの?!」
「だって...退屈だったから...」
「だったら一人で行きなさいっ!」
「一人寂しい。なずなはひのきが抱え込んでるしな」

ニヤニヤと言うユリに一瞬ウッと言葉につまるなずな。

「そう思うなら他人の女にちょっかいだしてねえで、ホップでも抱え込んでおけ」
なずなを抱き寄せてひのきがにやりとなずなの代わりにユリに言い返す。

今度は一瞬ユリが言葉につまった。

「ひのき、お前...いつからそんな嫌な奴になったんだ」

「おかげさまで皆してこっちに面倒ごと押し付けてくれるからな。
嫌な奴にでもならねえとやってらんねえよ。
...ちなみに、その半分は直接的にしろ間接的にしろお前の関係だぞ、鉄線」

「へいへい、そりゃ悪かったね。」
ユリは肩をすくめてなずなの隣の椅子の背に腰をかけた。

「んで?お説教に呼び出したのか?」
片手を頭にやって言うユリをひのきは見上げた。

「...もあるけどな。それより教えろ。
お前もしかして共鳴率上げる方法とか知ってんのか?
ホップにしてもジャスミンにしても第二段階いったのってお前と一緒に行動してる時だったし」

「ああ、その事か...」
ユリは言って少し考え込んだ。

「わかるようなわかんないようなって感じなんだよな、実は。
ポチの場合はさ、前にも言ったじゃん?
最初まず私ら3人の共通点って事で、禅やらせてみたけど外れっぽくてなんも起こらんでさ。
んじゃ、あと3人の共通点つったらヘビーな状況での戦闘かと思ってやらしてみたらこれも外れっぽくて...
撤退後戻ったポチが私がへばってる間に勝手に第二段階使えるようになってたんだよな。
本人の心境的には刺し違えてでも私を助けたかったって事なんだけど...」

そこでユリはクルっと人のいない方をむいて、頭をかいた。
一応照れてるらしい、と、ひのきは気付いたがあえて気付かないふりをしておく。

「んで一瞬誰かをかばうとかそういう気持ち持てばいいのかと思ってみたんだ。
まあ確かに私となずなはさ、お互い相手が倒れたら終わりっつうのあったから、お互いがお互いをかばうって気持ちはあったけど、よくよく考えてみたらひのきは別にそういうのねえだろ?
んで、ジャスミンのは...これがまじ偶然。
元々さ、埋め合わせのつもりだったんだ、今回は。
ポチが2段階行った時にさ、私が殿努めて撤退する時にさ、ポチ素直に逃げないだろうなと思って、ジャスミンいたらジャスミンの護衛って事で撤退するかなって事でジャスミン連れて行ったんだ。
そういう意味ではファーでも良かったんだけど、ファーだとファー自身が素直に撤退してくれなさそうじゃん?」

確かに...とファー本人を含めて納得する。

「だから戦闘力とかあんま期待してなくて、単にしくった時に素直に撤退してくれればそれ以上の事望んでなかったんだけど、本人すげえ自信喪失っつうか、滅入っちゃったみたいで、このままじゃ次の戦闘とかちとまずそうじゃん。
んで、元々自分がマンツーマンでフォローすりゃ軽めの敵なら行けるよなって事でまあ最終的に戦闘はするつもりで連れ出したわけな。
でもいきなり戦おうじゃ前回の二の舞だしな。

まずは気分ほぐすのと私のフォローを信用してもらうために少しジャスミンに慣れない事させてそれをエスコートする形で信頼をさせようと色々引きずり回したりしたわけ。
だから別に共鳴率あげようとかぜんっぜんしてないんだけど...
ただジャスミン的にちょっと気分の高揚みたいなものはあった気がするな、戦闘前の時点で。
だからどちらにしても精神的な何かな事は確かだと思うんだけど...それが何かがわかんない。」

ユリがそこで話を終えるとアニーが口を開いた。

「ジャスミンも...今朝はすごく参ってましたから...なんというか、一度すごく追いつめられた後になんらかの精神の高まりがあった時って感じですか...」

「ふむ...」
ひのきも考え込む。

「自分の時の事は、あんま記憶にねえんだよな。昔すぎて。
つか、時期的にはジャスティスになってすぐくらいだったような気がするな」

「そういう意味では追いつめられてってのはあるよな、成り立てなら。
でもそう考えるとさ、むしろ基地内で鍛錬してんのって無駄じゃね?
そんな事してる暇あったらガンガン実戦に放り込まれた方が良い気がする。」
ユリの言葉にひのきもうなづいた。

「ま、そのあたりはジャスティス側の総意として上げておくか」
「だねぃ。んじゃ、これでいいのかね?話は」
ストンと椅子の背もたれから立ち上がるユリの腕をひのきがつかんで止めた。

「まだ、あと一点」
「まだなんかあんのかよっ」

「ジャスミンな...今朝からアニーとつきあう事にしたらしいから。
ちょっかいかけないでやれ。
どうしても一人嫌ならファーかホップあたりを連れ歩け」

「別に...戦闘関係以外では特にちょっかいかけた気ないんだけど...まあ了解っ。
これからポチとメシだからそろそろ解放してくれ」

ユリが言うとひのきがパっと腕を放して、

「...だそうだ。もう俺らもいいな?」
とアニーに目をむける。

「今回は...色々お世話になりました。ありがとうございます、ひのき」
アニーはそれを受けてお辞儀をした。


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