姫を探しにいく、とアニーが消えた後、
「俺も探しに行こうか?」
とシザーにお伺いをたてたホップを
「やめといたほうがいい。見つけても逃げられるのがオチだから」
と、ユリは軽く手を横に振って止めた。
ユリの言葉に少し情けなさそうな顔で聞くホップに、ユリは言う。
「んにゃ、どっちかっていうと間抜け面?でも顔関係ないから。あれは...男恐怖症はいってるし」
「あらら、もったいない。」
ホップとシザーが口をそろえた。
「まあ...男作って欲しいのはヤマヤマなんだけどねぇ...なにせ近くにいた男があれだし。」
とユリは砂田をゆびさす。
「ストーカーって...女性の敵よねっ!」
ジャスミンの言葉にファーもうなづいた。
「ここにいる間に何かおかしな真似したら二人で絞めちゃおうかっ!」
言ってこぶしをぎゅっと握る。
「んで...能力としてはどうなのかな?彼女はジャスティスでもかなり特殊だから。
防御あげて治癒してくれるって感じだよね?
理想としては近接系の子と組ませるのが良いのかな?
ユリ君と組んでる時はどんな感じにしてたの?」
シザーは双子とは別の観点からユリに質問をする。
「ああ、私は中~遠距離の範囲系なんでなずなにまず支援能力を使わせてフリーダムの面々が肉盾になって私がガンガン攻めるって感じだったな。殺られる前に殺れって感じで。結構危ない橋渡ってたっす」
「...ユリ君自身はじゃあホップ君みたいな立ち位置なのかな、本来は」
「ん~、鉄砲小僧よりはウォンドで多少攻撃受けたり近距離戦闘できる分打たれ強いとは思うけど、実は私もなずなの支援抜きで戦闘したことないんで、単体になるとわかんないんすよ、自分でも」
「なるほど...じゃあ一度軽目の敵で姫抜きのユリ君の戦闘力試してみた方がいいね」
「そっすね。たぶんなずな抜きだと長期戦には役立たずになるかな。
私の攻撃は自然の属性の力を集約する系なんでかなり精神的に疲れるんす。
一発はでかいんだけど支援抜きだと長持ちしない気がする」
「ふむ...じゃあ基本的には姫ちゃんつけた方がいいのかな」
「ん~~~。でもなずなの支援能力は多彩なんで、私に限らず誰と組んでも相手の能力かなり底上げしますぜ?」
「そうなんだ?単に治療するだけじゃないんだ。」
「ですねぃ。本人に攻撃力全くないんで評価はされないけど、実はあれが一番やばい能力持ってると個人的には思います」
「なるほど...そういう話きくと全員と組ませてみたい気がしてきたなぁ...」
「は~い!まず私が一番ねっ!」
シザーの言葉にファーが勢いよく手をあげる。
「はいはい、検討しましょ。」
いきなり元気になるファーにシザーは苦笑した。
「おっ...音楽始まった。ジャスミン踊る?」
シザー達のやりとりを退屈そうに聞いていたジャスミンにホップが声をかけると、
「うん♪踊りたいっ♪」
とジャスミンはホップに手を差し出した。
「んじゃ、そういう事で。一抜けさせてもらうなっ」
うやうやしくその手を取ってホップはフロアに消えていく。
「アニーは...戻ってこないね...」
それを見送ってファーがぽつりとつぶやいた。
「お兄ちゃんと踊るかい?」
シザーが聞くがファーは
「兄妹でなんて踊りたくないもん」
とぷ~っと頬をふくらませる。
その膨らませた頬を笑いながらユリがプスっとつついた。
「じゃ、私と踊るか」
「ユリさん、踊れるの?」
ファーが見上げると
「うん、自分で言うのもなんだけど私はダンスうまいよ?」
とユリはニヤっといたづらっぽく笑う。
「ホントッ?!踊りたいっ!」
ファーの顔がぱあっと明るくなった。
「ではお姫様お手をどうぞ」
ユリは優雅に一礼してファーに向かって手を差し出す。
「はいっ!」
ファーはその手を取ってニッコリ微笑んだ。
「さて...ここで2択なんだけど...お姫様は目立ちたい?それともまったり踊りたい?」
ダンスをする人ごみにもぐりこむと、ユリはまずファーにニコヤカに質問を投げかける。
ファーはそれに対して
「もちろん!目立ちたいっ!」
と即答した。
「おっけぃ!ご希望のままに!」
その言葉にユリはファーの体をフワっと抱き上げてターンをする。
小気味よく派手ながら優雅にステップを踏む二人に会場の視線が集まった。
「女の子の方は...ブレインの部長のとこの双子よね?男の子の方は?エキゾチックでちょっとカッコいいわよね」
「オリエンタルビューティーよねっ。フリーダムの新人?」
「ちょっと神秘的で素敵よね//次ダンス申し込もうかしらvv」
長い髪をなびかせて踊る見慣れない東洋人に会場の...主に女性陣の熱い視線が集まる。
その熱い視線を受けている主と踊っている事がファーは少し嬉しかった。
ジャスティスの双子として、数少ない10代の女の子として、ファーももちろん人気はあったものの、男性陣の人気はいつも女の子らしいジャスミンにより向けられる。
注目をされるのも先に挨拶や誘いを受けるのもいつもいつもジャスミンで、ファーがジャスミンよりも注目を浴びるなどという事はめったにない。
それが今、会場の注目度ナンバーワンの相手と踊っているのだ。
しかも...自分で言った通りユリはすごくリードが上手くて踊っているととても気持ちが良い。
あっという間に音楽が一曲終わると、女性陣がわっとつめかけた。
「とても素敵なステップでしたわvv次の曲はぜひ私と踊って頂けませんかしら?」
口々にお誘いが飛び交いはじめ、ファーは夢のようなひと時が終わってしまった事に少しため息をつく。
「なに?ファー楽しくなかった?それとも疲れた?」
にっこり綺麗な笑みを浮かべて見下ろしてくるユリにファーは首を横に振ってうつむいた。
「楽しかったよ。とっても楽しかったから、終わっちゃって悲しいの」
「何?ファーはもう踊る元気ないの?音楽を奏でる楽団の面々はまだまだ元気そうだし、私もまだまだ踊れるんだけど?」
からかうように振ってくる声に顔を上げると、いたづらっぽく笑うユリと目があう。
「悪いね、今日は私はファーの専属だから、またの機会にね♪」
ユリが周りの面々に言うと、一斉に羨望のまなざしがファーにむけられた。
「さあ、次もはりきって行こう♪」
ユリが陽気に言って、優雅な手つきでフワっとファーを抱え、フロア中心にストっと下ろす。
ファーの顔にパアっと笑顔が広がった。
「鉄線ユリ君か...。なんだか面白そうな子が入ってきたね」
珍しく満面の笑みで楽しそうに舞踏会を満喫しているらしいファーの様子を遠目で見て、シザーはクスっと笑った。
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