ツインズ!30章_4(完)

アリス視点

彼女が諦めるのをやめたわけ4


あ~あ…言っちゃった…
警察署を出ると、がっくりと力が抜ける。

思えば父に意見したなんて初めてのことじゃないだろうか…。

もうすぐ成人だから…などと啖呵を切ったものの、まだ4年は学生生活だ。

学年トップの成績で大学も学費こそ全額奨学金の特待生なわけだが、衣食住は親に頼らなければならない。
そう考えると自活できるわけでもない状況であれは、なかなか今後の生活が気まずくなるなぁ…と、ため息。

それでも…言いたかったのだ。
そもそも父が悪い。
逆方向のマザコンじゃないか。

さらに…母も娘に向かって泣くくらいなら、世の奥様がたのように
『お母様と私、どちらが大事なの?!』
くらい本人に向かって泣きながら訴えれば良いのだ。

父はアーサーに自分の中で昇華しきれない実母の姿を追い、母は自分に父に言えない泣きごとを言い、お互いがお互いを見てお互いに向き合っていない事がそもそもの間違いだったのだ。

ツインズ…双子…
その状態で、本来は自分で自分を磨けばいいだけのところを、自分が欲しかった要素を持つ片割れがいるから…と逃げていた自分も自分だとは思うが……

そんな事を考えながら、アリスは最近少し洒落たカバーに変えたスマホを取り出した。
それをタップする指先の爪は、学校で禁じられているため色こそつけてはいないが、ちゃんと磨いてつるつるだ。

Hello?ロヴィ、とうとう言っちゃったわ」
と、電話するのは年上の彼のところ。

『そうか。とうとう、言ったのか。頑張ったな』
と、こんなことでも口に出して褒めてくれるのが嬉しい。

そのあとに
『ま、もしあまりに実家気まずいなら、当日着替え持参で来るなら、しばらく俺んとこ泊めてやっても良いけど?』
と、彼の家で手料理でもてなしてくれるという数日後のアリスの誕生日の話になって、最後にそう付け加えられる。

それはアリス的には楽なわけなのだが……

「うん。ありがとう。でもいいわ。
気まずいうちはパパママの間も解決してないわけだしね。
急に向き合えっていっても、20年ほど互いに目を反らし続けて来た2人だもの。
2人きりで解決って無理そう。
間に冷静な人間がはいってあげないとね。
任意で善意なら…いいんでしょ?」

「アリスらしいな。
逃げずに真面目に向き合う姿勢は偉いけどな、無理はすんなよ?
無理だと思えば電話しろ」

申し出を受けないという選択をしても、それをまた認めて褒めてくれる。
しかし、そこで申し出を受けていたとしても、自分を守るために敢えて逃げると言う選択肢を取ったアリスは偉いと褒めてくれる気がした。

そう、どちらにしても後悔しない選択が取れるのは…

「あのね、失敗するかも。逃げるかもしれない。
でもそれでも自分で失敗するかもしれない事をやってみようって思えるようになったのはね、ロヴィが居てくれるようになったから。
失敗しても自分1人で途方にくれなくて良くなったからよ」

思った事はそのまま言っても大丈夫なのだ、と、思えるようになったのもロヴィーノの影響だ。
だから告げる。

でもアリスには信じるままに行動して、思ったまま言えば良いというロヴィーノは、実はすごい照れ屋だ。
言葉が返ってこない今は、きっと電話の向こうで真っ赤になっているに違いない。

それに小さく笑って
「これから店に行くわ」
と言って電話を切る。

ついさっきまであんなに疲れきっていたのに、電話一本、彼の一声で元気になってしまうなんて自分は随分と現金だと思う。

だけどもう良いのだ。

自分はしっかり者で責任感の強い自分を捨てない。
だけど、それを持ち続けているからと言って“可愛い”を諦める必要は全然ないのだ。

しっかり者で少し神経質で几帳面で…でも甘えるのも可愛いのも大好きな自分。
それに向き合って認めてくれる彼が居る限り、アリスは自分が持つもの望むものを全て諦めずに抱えていけるのだった。



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2 件のコメント :

  1. こんばんは
    ツインズなどいろんな作品を拝見させていただきました。
    アーサーもアリスも報われてとても良かったって思いました。これからも応援しています!

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    1. コメントありがとうございます♪
      ツインズ!(双子)なので、基本ぷえですが、両方を幸せに出来ると良いなと思って描いてました。
      これからもおそらくコツコツ色々を更新すると思いますので、お付き合い頂けると嬉しいです

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