ギルベルト視点
そうしておとぎ話の終わりは常にめでたしめでたしである1
「へ…?父親??」
結局その後、警察が来た。
そして救出。
ギルベルトは気を失っているお姫さんに付き添っていて、後の事は全てエリザがやってくれたらしい。
色々ショックが大きかったのか、お姫さんはまだ意識が戻らずベッドの上だ。
殴られたのが顔、ようは頭だったので、どちらにしても念のため一日入院である。
犯人は父親で、別に乱暴目的ではなく、単に錯乱してお姫さんを他の男のために死んだ自分の母親に重ねて、他の男が買ったのであろう衣服を着ている事が嫌で全てをはぎ取ろうとしたということらしい。
「そっか……」
はぁ…と頭に片手をやったまま、へなへなと椅子に崩れ落ちるギルベルト。
その様子に上からやや呆れた声が降って来た。
「何よ、あんた処女厨?」
「あ?なんで?処女だろうと非処女だろうと、お姫さんが傷つけられていいはずねえだろ」
「そういう意味ね。安心した。
じゃ、これ。
しっかり誤解解いてプロポーズしてらっしゃいな。
花はあたしからの怖い思いさせたお詫びだから」
と、次に降ってきたのは今日受け取った指輪の箱と薔薇の花束。
それに礼を言うと、ギルベルトはお姫さんが目を覚ますのを待った。
本当に…自分の不手際でお姫さんを悲しませるどころか、大変な事になるところだった。
猛省していると、金色の睫毛がふるりと震えて、ゆっくりと開いていく。
そこから現れるのはため息が出るほど美しい淡いグリーンの瞳。
…お姫さん…好きだ。結婚してくれ。
色々と言いたい事はあるのだけれど、説明しなければならない事もあるのだけれど、今は自分が一番言いたい事を素直に言ってしまった方が、速やかにお姫さんの誤解を解いて不安を払しょく出来る気がする。
目が覚めていきなりだったので、状況が把握できないのだろう。
ぽかんと口を開いて目をぱちくりしているのが愛らしい。
そんなお姫さんにギルベルトはたたみかけた。
「今日はひそかに注文してたお姫さんにプロポーズするための指輪を受け取りに、その宝石店を紹介してくれた従姉妹と受け取りに行ってたんだ。
ちゃんと色々な手はずを整えてから言いたくてな。
でも結果、お姫さんを1人で留守番させることになって心細い思いさせることになっちまって悪かった」
相変わらず口ほどに物を言う目だと思う。
誤解してました…と、丸わかりしてしまう表情。
それでも信じ切れずに見あげてくる大きな目。
これ…少し早いけどな。
と、指輪を出して人差し指にはめてやると、そのどう見てもお姫さんのためのモノと分かる証拠を前に、緊張して身を固くしている猫のようだったお姫さんが、ふにゃっと緊張を解いて泣き崩れた。
「ごめん。不安な思いさせてほんっとに悪かった」
ごめんな?と、抱きしめると、半身を起してきゅうっとしがみついてくるのが愛おしい。
「あと5日だ。5日たって3月3日になってお姫さんが18になったら、俺様と結婚してくれるか?」
とさらに聞くとコクコクと腕の中で頷くのにホッとして、ギルベルトは婚姻届を差し出した。
すでに入っている自分の名。
その横に名前をいれてもらうよう、ペンを差し出す。
アーサー…カークランド……と、そこにお姫さんの名前が入って、それはこれから2人が一緒に生きて行く一つの証となった。
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