ギルベルト視点
エンゲージリングはトラブルの始まり3
こうして色々をつらつらと考えている間に目的地へ。
元々10分前行動を心掛けているのだが、今日は特に自分の用事でつきあってもらうので遅刻はできないと、それより多少早く着くように出て来た。
まあ、彼女も時間には正確な方なので、待たせなかった事にはホッとする。
幼い頃から一緒にいる幼馴染でもある従姉妹なので、普段は悪態ばかりつきあっている間柄だが、その辺は親しき仲にも礼儀あり。
自分の用事で時間を割いてもらうのだ。
そんな状態の時に相手の方を待たせるなど論外である。
普段から可愛らしい男の子が大好きで、そんな男の子を描いた男同士の恋愛を好む、いわゆる腐女子と言う人種の彼女には、事情を話したらすごい勢いで食い突かれた。
今回の同行を申し出てくれたのも彼女からで、おそらくそれは善意の身からのものではなく、嬉々として色々聞かれるのだろうと思うが、いつものようにキレないようにしなければならない。
男性同士の恋愛というものに対しては、実地ではなく知識のみではあるものの、その知識ですらほぼない自分が手っ取り早く瑣末な知識を得るには一番気軽だろうし、彼女にはこの先色々世話になるかもしれないと言うのもあるわけではあるし…
ということで、お姫さんとの交際を速やかに進めるためにも、彼女との関係は良好に保った方がいいだろう。
そんな事をつらつらと考えていると、いつのまにか待ち合わせの時間の5分前になっていて、見覚えのあるスラリと背の高い美女が視界に入った。
そう、エリザだ。
自分もそうだが割合と目ざとい彼女はすぐギルを見つけて走り寄ってくる。
「ごめん、待った?」
と言う声は、一目で機嫌が良いとわかるにこやかなもので、そもそもが自分に対してこういうトーンの言葉が向けられるのは珍しいが、まあ悪くない。
普段ならそう…
──早いわねぇ。あんた厨2で俺様のくせに、変なところで律義なおとこよね──
などと言う言葉を吐いてきて、そこから喧嘩になるパターンだ。
もっとも彼女だけじゃなく、逆の立場なら自分も似たような事を口にして彼女を怒らせるわけなのだから、それを責められたものではないのだが…
しかしとにかく今回は彼女の方が極々普通の言葉をかけてきたので、ギルベルトだってそれに悪態を突く事はない。
素直に
「俺様の側の用につきあわせるわけだしな。
今回はわざわざ時間を取らせて悪い。でも助かるわ」
と、和やかに言葉を返して、
「別にいいわよ。私もついでに見たいものがあったし。行きましょ」
と、うながす彼女と駅を出て街中へと足を踏み出したのだった。
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