ツインズ!26章_2

ギルベルト視点

エンゲージリングはトラブルの始まり2


ということで指輪購入のXday

これまで2年間、不安だろうと言う事でなるべくお姫さんを1人にしないように、誰かしらが極力一緒に居るように努めて来たし、今回自分が出かけるにあたって誰もいなくなると言う事を避けて日程を組んだつもりだったのだが、前々日に急きょ部活の後輩達がお別れ会を開いてくれる事になったと言うルートと、やはり同日に普段は忙しくて会う事ができない外国済みの古い友人が訊ねてくるので会うと言う叔父。

2人とも相手の都合なのでこの日を外せなくなってしまったわけだが、ギルベルトも自分だけで買いに行くならとにかく、同行して馴染みの店員を紹介してくれると言うエリザと約束してしまっている。

まだエリザだけならギルベルトが頭を下げて日を変えてもらって後で埋め合わせの一つに彼女の趣味の薄い本の原稿の手伝いでもすれば良いが、紹介してもらう店員は仕事がある。

お得意様の令嬢であるエリザ自身の買い物ならとにかく、ギルベルトのために何度も予定を変えさせるわけにもいかない。

なのでその日は仕方がないので可哀想だがお姫さん1人に留守番をしていて貰う事にした。



指輪を買いに行く事は当然お姫さんには内緒なので、指輪のサイズはお姫さんが眠っている時にこっそりはかっておいて、今日はただ野暮用があるから…と、家を出る。

エリザは自宅からそう離れていない所に住んでいたが、少々変わった性癖のため、お姫さんを巻き込みたくないというのもあって今まで会わせないようにしていたし、万が一を考えて待ち合わせは家の近所ではなく、宝石店のある場所の最寄り駅。

そう、初めてお姫さんと待ち合わせをしたあの駅のあの場所だ。



今日は訊ねる店が店なので、セミフォーマル。
ラフな服も嫌いじゃないし、普段はジーンズで過ごすことがほとんどなのだが、ギルベルトは実はフォーマルも嫌いじゃない。

時間が取れたら正装をしてお姫さんと出かけてえなぁ…などと籍を入れたあとの未来に思いを馳せながら、ギルベルトは電車のドアの横の手すりにもたれかかって流れて行く景色を眺めていた。



こうしてもうすぐとりあえずのゴール時点に辿りつく今にして思い返せば、お姫さんと出会ってからは色々が激動だったと思う。

お姫さんに関しては【受け入れる】or【受け入れない】、【保護する】or【保護しない】、【先を決めて進む】or【進まないで現状維持】と、二択の選択肢が次々と出てきて、いずれも“しない”という方を取れば、そこでお姫さんとは終わり。
縁が切れる代わりに静かでたやすい日常がもどってくるところだった。

もちろんギルベルトとしてはおそらく電車の中で出会って一目惚れをした時点で、どれだけそれが困難を伴う関係だったとしても、自分の人生の中からお姫さんの存在が消えるなどという選択肢を取る事はありえなかったのだが……

お姫さんと一緒に生きていくための道は色々が困難だったし忙しかったが、ギルベルトの人生はそこからが本番だったと言っても良い。

それまでだってダラダラ生きていたつもりはないものの、それまでの人生は今にして思えば準備期間だった。

そう、お姫さんと出会って、お姫さんを守って生きて行く力をつけるための……


この国は確かにマイノリティではあるものの同性同士の結婚もできて、一部過激な否定派が全く居ないかと言えば居ないわけではないのだが、恋愛相手の性別の自由はおおむね認められているし、特に都市部ではそのあたりには寛大だ。

だから同性であるというのは問題にはならないのだが、お姫さんの場合は本当に実家の諸々が大変だし、本人もなかなか繊細にして難しい性格をしているので、これから歩む道も平たんとは言い難いだろう。

それでも…腕の中に幸せそうに微笑むお姫さんを抱え込めると思えば、それもたいした障害ではない。

まあ…ギルベルト的に当座の一番の問題というか関心事は、籍を入れて正式に夫婦になったということで出てくるであろう“”の事だったりするのだが……



(…お姫さん…“そういうこと”も込みで考えててくれてっかなぁ……)

最初に自宅に連れて来た夜、お姫様はギルと一緒に居たいと言ってくれた。
恋愛的な意味でお姫さんを好きだと言うギルベルト自身の気持ちはその時に伝えてあるし、お姫さんもそれは受け入れてくれている。

だが複雑な家庭環境のせいでどこか人慣れていないお姫さんが、その“恋愛的なこと”をどこまで知っているのか、理解しているのかは実はいまだ確認もしていないので、謎である。

もっと言ってしまうなら、異性間ですれば子どもが出来るような性的な行為についての知識を持っているのだろうか?

同性の親である父親とは折り合いが悪いのでそんな話はしないだろうし、同性の親がいるのに異性の母親がわざわざ息子にそんな話はしないだろう。

もしかして下手をすれば、ギルベルトが実地で教える羽目になったりするのだろうか…
その際に、そんなことまでするものだと思わなかったとか言われたらどうしようか…

(…そんなことになったら…俺様一生利き手が恋人になったりするのか?
てか、それ以前に教えて怯えられたらどうするかな…)

もし知識がなかった場合、怯えるお姫さんを強引に暴くなんてことは絶対にできないし、そうなると、すやすやと子どものように安らかに眠るお姫さんを隣に、悶々と眠れない夜を過ごす日々…なんて事になる可能性は十分ある。

しかたがないから“相手を怯えさせない性教育マニュアル”でも帰りに探すか…と、電車の中で考えることではないなと思いながら、ギルベルトはため息をついた。



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