ギルベルト視点
エンゲージリングはトラブルの始まり1
アーサーが高3の2月の終わり。
3月3日生まれのアーサーの誕生日がもうすぐ来る。
そしてそれはギルにとって特別な事を意味する。
そう、高3の誕生日を迎えると言う事は、アーサーが18歳になると言うことだ。
つまり…その日になれば彼を自宅に引き取ってからずっと考えていた、“籍を入れる”、と言う事が可能になる。
そうなればアーサーを手放す事に反対しているらしい父親に見つかっても、堂々と拒否できる。
今はかろうじて母親の許可の元、父親に居所がわからないように気をつけながらの同居なので、見つからないように、万が一見つかっても強硬手段で連れ戻されたりしないようにと、アーサー1人で外出させないように、常に周りをがっちりガードしている状態だが、そんな生活ももうすぐ終わるのだ。
無理矢理父親に連れ戻されても、当然の権利として自宅に連れ戻せる。
もうすぐ…もうすぐだ。
ということで、ギルベルトの中では半ばそれは決定事項だし、アーサーだってギルベルトの元に居る事を望んでくれているようなので、誕生日と共に籍を入れてしまいたい。
だが、それはそれとして…、まるで便宜上のように大急ぎで籍だけ入れて終わると言うのは、あまりに味気ない。
だからせめて誕生日の少し前あたりに、きちんと指輪を渡してプロポーズをして、誕生日の日に2人で書類を役所に提出しに行こうと思っている。
新婚旅行とかも連れて行ってはやりたいが、3月始めだとまだ高校生のアーサーは学校があるので、それは春休みのお楽しみだ。
ということで、アーサーが寝ている間にこっそり指輪のサイズを測って、今日は指輪を購入しに街へと出て来た。
幸いにして従姉妹の家が有名な宝石店のお得意様なので、慣れない事もあって彼女に付き合ってもらう事にしている。
このことについてはアーサーには秘密だ。
サプライズ的な意味合いと言うよりは、ギルベルトの大切なお姫様のメンタルの問題である。
実は父親がアーサーに執着をしていてアーサーを見つけたら連れ戻そうとするであろうことは、彼は知らない。
単に父親は自分を嫌って自分を見たくないから、アーサーが家を出る事は双方が望んでいると思っている。
ずっと追われているのだ、というプレッシャーを大切なお姫さんに与えたくなかった。
本人にそうと知られないように、叔父と弟と3人で協力してガード体制を作って2年。
やっと……やっとだ。
もう役所で必要書類はもらっているので、今晩、2人きりの離れでそれと指輪を渡してプロポーズ。
その時には本当の事は知れてしまって誕生日で完全に籍を入れるまでは若干心細い思いをさせるかもしれないが、ギルベルトはもう大学の試験が終わって春休みに突入しているので、全面的にガードできる。
ということで、とにかく指輪、そう、あとは指輪が必要なのである。
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