アーサー視点
ラプンツェルは嫉妬する4
しばらく2人で指輪を見た後、彼女は別に何かを出してきてもらってそれを見ている。
幸せそうな2人…
自分自身に引導を渡すため、少しでも可能性にすがってギルの幸せを邪魔したりしないように…と、アーサーはその2人の様子をしばらく見ていた。
そうして確認が終わって包装するのか、店員が指輪を持って下がって行ったのを確認して、もういい…大丈夫…と思ってそこを離れる。
いつもなら追って来てくれるであろうギルは、アーサーが居る事も知らないままだし、そもそもが指輪を贈るような女性と一緒なのだから、彼女を放ってくるわけがない。
なのに何かに追われているような気持になって、アーサーは人ごみをかきわけて走った。
ギルに恋人がいた…
別に悪いわけではない。
だってアーサーとの関係は“ギルに本当に好きな相手が出来るまで”という約束だ。
強いて文句を言うなら、その相手が出来たなら早く言えば良いのに…ということだが、慎重なギルの事だ。
ちゃんと正式に指輪を交わしてから…と言うことだったのだろう。
悪くはない。
ギルは全然悪くはない。
ただ、アーサーが少し……悲しいだけだ……。
今まであまりに居心地が良かったから、期間限定の立場だという覚悟をしていなかった自分が悪い。
でも……
………
………
………
嫌だ…と、思った。
これから帰ればきっとギルがお揃いの指輪をした彼女を連れて来て、紹介するのだろう。
アーサーの事はどう言っているのだろうか?
単に家庭の事情で一時的に預かっている子どもだといっているか…それとも本当の事を言っているか…。
ギルだったら後者かな、と、思う。
そしてギルの彼女も、ギルが選ぶような相手だから心が広くて、『そういう大変な事情があって自宅に帰れないなら、私が居ても気にしないでここにいてくれてもいいのよ』くらいは言いそうな気がする。
そんな中で自分だけ暗い顔をして嫌な空気を作るわけにはいかないが、明るく応じる自信がない。
ギルの彼女と笑顔で話すなんて事は出来そうにない。
だから消えたい。
そして消えるなら今だ…と思う。
ギルの彼女を紹介されてからだと、あるいはそのせいで…とかギルや彼女に責任を感じられそうだし、ギルの彼女の事を知ったと知られていない今なら、誰のせいとも思われず消えられる。
どんなに急いで離れたくてもアーサーは体力がなくて、5分ほど走って、メインの通りを抜けて人通りのない裏通りまで来ると、はぁ…と、通りに面したマンションの壁にもたれかかった。
と、その時だった…
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