ギルベルト視点
奪取…そして…1
──ふ…ざけんなっ!!
リビングに通されて事情を聞いた時、ギルベルトは頭にか~っと血が上った。
自殺した自分の親に似ていたから?!
そんなの俺様のお姫さんにはなんにも関係ねえじゃねえかっ!!
そんな理由で自分の大切なお姫さんは小さい頃からずっと否定されて怯え続けていたのか…
そう思うと、怒りのあまりクラクラする。
「母上のことではないだろう?
母上の方はそれを不憫に思ったからこそ、こうして御主人の反対があるかもしれなくても私達の申し出を受け入れて下さろうとしているのだから」
と、制する。
確かにそうだ。
今彼女を責めたりしても気が変わられるかもしれないだけで、良い事はない。
お姫さんの事を本当に考えるなら、協力を申し出てくれている母親まで敵に回す意味はない。
そう思えば自分の感情を通すのは愚かだ…と、ギルベルトは怒りを堪えてただ黙り込む。
母親の話によると、ギルベルトのお姫さんは、父親が子ども時代に自殺した母親にそっくりで、父親は幼い日に自分を捨てるように死んだ母を見るようで辛く当たったらしい。
しかも、あまりに辛いならと、事情を知る母親がお姫さんを自分の母親に預けようかと提案したのだが、母親に見捨てられた感がある父親は、それは嫌だ、相手が離れていくのは嫌だとそれを拒否したのだと言う。
なんて身勝手な!と怒りが収まらないギルベルトだが、父親がそういう理由でお姫さんを手放すのを望んでいない以上、成人までの2年間は母親の許可と説得だけが頼りだ。
とりあえず当座はお姫さんは母方の祖母に預けていると言うことにして、その間に学校の転校手続きをすませ、お姫さんの安全を完全に確保した時点で説得開始。
状況によっては正式に叔父の紹介する弁護士を通して接近禁止を言い渡す事も視野にいれる。
まあ出来ればそこまではしないで済む方がいいのだが……
幸いにして学力は決して低くないお姫さんの転校先はルートの通う高校。
同学年なのでずっとガードする事が可能だからだ。
そのあたり叔父は抜かりがないと思う。
おそらく自分達の両親が亡くなった時も、莫大な祖父の遺産の半分を相続した娘の遺産をさらに相続する事になる、まだ自衛も出来ないような幼い甥達を、まだ若干24歳くらいの叔父はそうやって守ってくれたのだろう。
大切な誰かを守れるだけの強さと知恵のある人間になりたい…
ギルベルトは叔父の姿を見て改めてそう思った。
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