アーサー視点
二つの救出5
とにかく全てにおいてフリッツやギルはまいってしまっているアーサーの負担にならないようにと、色々心を砕いてくれていたようだ。
「そうだ!せっかくお姫さんが我が家の子になったわけだから、可愛い服を買い込もう!
殺風景な男所帯が一気に華やかになるような可愛い服をたくさんね」
と、思いついたように言うと、車を街中の方へと走らせて、休日のデパートへと駆け込んだ。
そこからはまるで毎日がお出かけか?と思うような可愛い服をめいっぱい買い込む。
店の人間には男所帯に紅一点の娘と思われたらしく、フリッツはお父様、ギルはお兄様と呼ばれていたが、2人とも敢えて否定をしないので、アーサーも黙っていた。
そうしてフリッツとギルが両手いっぱいの袋を持って、店内のカフェでお茶。
「妻は欲しいと思った事はなかったが、甘やかさせてくれる娘はいたら楽しいね」
と、フリッツが笑って、みんなで食べよう!と、パフェ全種類を注文する。
そうして注文しておきながら、テーブルにところ狭しと並べられたそれを、まずは好きなだけ食べなさいとアーサーに食べさせてくれた。
ギルと違ってフリッツ自身は甘い物も嫌いじゃないようで一緒に食べていたが、甘い物がどうやら苦手らしいギルはそれを蒼褪めた顔で見ていて、フリッツはそんなギルに
「お前達はつきあってくれないし…中年のオジさん1人でこういうカフェは辛いからね。
本当に良い子を連れて来てくれたよ。
今度はお姫さんとスイパラに行こう!」
と、笑って言った。
そうしてギルの家に戻ると、ルートが美味しい夕食を用意して待っていてくれる。
「今日はデザートも作ってみたのだが…良ければ食べて欲しい」
と、少し照れくさそうに言いつつ、料理を並べるルート。
ムキムキの身体に纏うエプロンの模様がクマで、なんだか可愛らしい。
食後はギルがご自慢のフルートを披露してくれて、アーサーもピアノなら弾けるので申し出て、2人で演奏した。
3人3様にアーサーを気遣ってくれるウサギの国の住人達。
父親に受け入れられない、姿を見たくないと言われたアーサーを気の毒に思ってのことかもしれないが、実はアーサー自身はその事についてはそれほどショックは受けなかったように思う。
現金なようだが、嫌いなら嫌いで構わない。
嫌な顔をされながら顔を合わせないとならなかった事を考えると、こうやって笑顔を向けてくれる人達の中で暮らせるのは幸せだ。
もちろん人間の子どもは1人では生きていけないので、嫌っていようと今までちゃんと生きていけるだけの衣食住を与えてくれた事は、父に感謝はしている。
ただ、その相手が絶対に父が良いと言うだけの思い入れが父親に対してなかっただけだ。
血がつながっている相手でなければ絶対に嫌だと言うには、おそらく自分と父は気が合わなすぎたのだと、アーサーは思った。
実際は…父親側は嫌いだから見たくない、そんな単純な感情ではなく、色々拗れていたのだが、それはアーサーには伝えられなかったので、この時の彼は知る由もなかったのだが…
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